ゼレンスキー氏、NATO加盟断念の用意 米との協議は15日も継続

2025/12/15 10:23 

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 ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、欧米による「安全の保証」が得られれば北大西洋条約機構(NATO)への加盟を断念する用意があると表明した。米国は加盟断念を求めており、応じる姿勢を示した。

 ウクライナとロシアの和平を仲介する米国は年内の合意を目指しているとされ、ウクライナに和平案へ合意するよう圧力を強めている。ゼレンスキー氏は譲歩する姿勢をアピールすることで、和平の進展に意欲があると示す狙いがあるとみられる。

 ゼレンスキー氏は14日、ロシアとの和平を仲介する米国のウィットコフ中東担当特使らとベルリンで会談した。会談に臨む前、記者団に対し「ウクライナの望みは最初からNATO加盟だった。だがその方向性を支持しない欧米のパートナーもいる。これが我々の譲歩だ」と語った。

 代わりに、加盟国への攻撃を全体への攻撃とみなして集団的自衛権を行使するNATOの条約第5条と類似した形の「安全の保証」を米国と欧州が提供するよう求めた。

 ロシアはウクライナのNATO加盟に断固反対している。ロシアとの紛争に巻き込まれる懸念から欧州の加盟国からも慎重な声があり、加盟が現実的でなくなっていたことから、ウクライナも最近では声高に主張することはなかった。だがゼレンスキー氏が加盟断念に言及したことは、ウクライナにとっては転換点となる。

 一方、ロイター通信によると、ゼレンスキー氏とウィットコフ氏らの会談は5時間以上続いたが、15日に持ち越されることになった。15日には、英仏や欧州連合(EU)の首脳も訪独し、ゼレンスキー氏と会談する予定だ。

 ウィットコフ氏は会談後、X(ツイッター)で「20項目の和平案や経済的な議題などについて詳細に議論した。多くの進展があった」と述べた。ただ、焦点となっている領土問題では米国とウクライナの主張に隔たりがあり、折り合いがつかなかった可能性がある。

 米国はウクライナが維持する東部ドネツク州からウクライナ軍が撤退し、非武装中立の「自由経済地域」とすることを提案している。ゼレンスキー氏は会談前、この案について「公正だとは思わない」と否定的な考えを示し、「ウクライナ軍が撤退するなら、なぜロシア軍はしないのか」と疑問を呈した。

 ゼレンスキー氏は「公正で可能な選択肢はこうだ。我々は今いるところにとどまる」と述べ、前線を停戦ラインとする従来の主張を改めて強調した。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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