<特派員の目>中国人旅行客は日本から消えたのか 激減の裏で変化=松倉佑輔

2026/03/22 16:00 

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 中国人旅行客は日本から消えたのか。

 2月の中国の大型連休「春節(旧正月)」。例年、多くの観光客が中国から日本へ向かうが、今年は様相が違った。「訪日の需要はほぼ半減した」。ある旅行業界関係者はこう話す。

 近年、中国人旅行客にとって一番人気の旅行先だった日本は今年、トップの座から陥落した。

 原因は明らかだ。高市早苗首相の昨年11月の台湾有事を巡る発言に反発する中国政府は、日本への渡航を控えるよう呼びかけ続けている。

 中国と日本を結ぶ航空便は4割以上減り、旅行会社も団体旅行の受け付けを停止。日本政府観光局(JNTO)によると、中国からの旅行客は前年同月比で12月は45.3%、1月は60.7%も減った。

 中国人旅行客は日本の代わりにどこに向かっているのか。増加が目立つのはタイや韓国、マレーシア、シンガポールなど近隣のアジア諸国だ。ある北京の旅行会社社長は「日本行きを希望している顧客には代わりに韓国を提案している」と明かす。

 各国は中国からの誘致策をここぞとばかりに活発化させている。昨年は治安への不安から急激に中国人客が減ったタイでは、官民を挙げて各種キャンペーンを展開。ロシアやトルコは個人の中国人旅行客に対するビザの免除政策を始めた。

 全体では日本から他の国へのシフトが進む一方で、日本に向かう人たちも一定数いる。「政治の話は関係ないし、日本は他の国にはない魅力がある」。北京に住む20代の会社員男性はこう話す。

 こうした個人旅行客は若年層のリピーターが多く「本当の日本好き」の人たちだ。彼らの向かう先は「爆買い」目的の銀座や人であふれる京都に限らない。地方での「体験型」消費が今のトレンドだ。周囲の中国の友人に聞くと、東北や北陸、九州など地方都市への関心が目立つ。今後、日本に向かう観光客はこうした趣向の若者が増えてくるとみられる。

 オーバーツーリズムに悩む観光都市と異なり、これまで十分にインバウンドの恩恵を受けられなかった地方都市もある。国籍にとらわれず、新たなニーズをどう地域振興につなげていくか。「日中対立」や「中国人旅行客減少」という言葉や数字の裏にある、変化の内実を見極めることが大切だろう。【北京・松倉佑輔】

毎日新聞

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