<チョルノービリ原発事故40年>戦争で狙われる原発 浮き彫りになる脆弱性、軍事攻撃は想定せ…
ウクライナに全面侵攻したロシアは、ドローンやミサイルでウクライナの発電所や変電所、送電網などのエネルギー施設を集中的に攻撃してきた。これらは軍事目的というよりも、社会を揺さぶる狙いの方が強い。ウクライナ危機はこうした「戦争リスク」が原発にも及ぶことを示した。
ロシアは2022年2月の侵攻直後にウクライナ北部のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発を、3月には南部にあるザポリージャ原発をそれぞれ占領した。チョルノービリ原発は3月末に解放されたが、ザポリージャ原発は現在も占領が続く。戦闘で送電線が損傷するなどして10回以上、外部電源の遮断を繰り返しており、核燃料の冷却ができず事故に至る事態が懸念されている。
従来、原発を軍事目標とすることには、ある種の「抑止力」が働くとみられてきた。事故が起きた際の被害があまりに甚大なため、占領計画に及ぼす影響が大きく、場合によっては侵攻した国にも放射性物質が飛来する恐れがあるためだ。
環境NGO「グリーンピース・ウクライナ」に所属し、ウクライナで原発の調査経験を持つショーン・バーニー氏は、ロシアによる原発への攻撃は戦略的だと指摘し「ウクライナと欧州に対する脅威として原発を利用することが目的だ」と話す。
その上で、ザポリージャ原発の占領はウクライナ国内向けの電力供給を断ち切る狙いがあり、チョルノービリ原発の場合は高い知名度を利用して国内外の不安をあおる思惑があったとの見方を示す。原子炉や使用済み核燃料の貯蔵施設、送電網は軍事攻撃を想定した設計にはなっていないといい「世界的に原発の脆弱(ぜいじゃく)性は非常に高い」と潜在的なリスクを指摘する。
26年2月末以降の中東情勢を巡っても、イスラエルが、イランの国内供給の大半を担うガス油田を空爆し、直後にイラン側がカタールの液化天然ガス(LNG)複合施設をドローンで攻撃するなど、原油やガスの関連施設や発電所などを狙った応酬が続いている。社会全体に影響を与えるエネルギー施設への攻撃は戦争の「定番」となりつつある。
国際原子力機関(IAEA)によると、3月17日夜、イラン南部ブシェール原発の敷地内に飛翔(ひしょう)体1発が着弾した。原子炉からは約350メートル離れており、原発本体や従業員の被害はなかったが、原発の「戦争リスク」は中東でも浮き彫りとなっている。【ブリュッセル岡大介】
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