韓国EC大手の情報流出が米韓摩擦に飛び火 安保協議にも影響か

2026/04/29 17:28 

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 韓国の電子商取引(EC)大手クーパンを巡る顧客情報流出事件が、思わぬ形で米韓関係に波紋を広げている。米国籍の創業者への対応を巡り、米政府が韓国政府に圧力をかけていると伝えられており、原子力潜水艦の建造を含む安全保障協議にも影響が及びかねない事態となっている。

 約3370万人の顧客情報流出は、昨年11月に判明した。韓国メディアによると、中国籍の元社員が流出させた疑いをもたれている。クーパンは韓国版「アマゾン」とも称され、売り上げの大半を韓国市場に依存する。一方で米ニューヨーク証券取引所に上場しており、創業者のキム・ボムソク最高経営責任者(CEO)は米国籍を持つ。

 流出への対応が問題視され、韓国国会はキム氏に聴聞会への出席を求めたが、国外に滞在していたキム氏はこれを拒否。与党からは「国民を欺く行為だ」と責任追及を求める声が相次いだ。韓国政府は副首相をトップとする調査タスクフォースを設置した。

 韓国警察は昨年12月に韓国法人の本社を家宅捜索。今年1月には韓国法人のロジャース臨時代表に対し、証拠隠滅などで捜査を妨害した疑いがあるとして出頭を要請した。更に法務省に対し、キム氏が入国した場合に通報するよう求め、捜査を進めている。

 ところが4月に入り、事件が外交問題へと発展していることが判明した。21~22日、民放SBSなど複数の韓国メディアが、米政府が韓国政府に対し、キム氏を拘束したり、出国禁止措置をとったりしないよう求めていると報じた。応じない場合、外交・安全保障分野の高官協議を見送る意向も伝えたという。これを受け、昨年米韓で合意した原子力潜水艦の建造や、ウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理に関する実務協議に遅れが出るとの懸念が広まっている。

 背景には、米側で今回の問題を自国企業に対する不当な規制と受け止める見方が強まっていることがある。クーパン側はホワイトハウスや国務省、政界などに大規模なロビー活動を行っているとされる。今年1月にバンス米副大統領が、韓国の金民錫(キム・ミンソク)首相と会談した際に、クーパンについて言及。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国を基盤とする企業への規制を推進しないよう警告したと伝えていた。

 米政界やホワイトハウス内の一部には以前から、李在明(イ・ジェミョン)政権の対中姿勢を警戒する見方がある。こうした不信感を持つ層の声が、米側の対応に影響しているとみられる。同社株を保有する複数の米投資会社も、クーパンに対する措置は差別的であり、米韓自由貿易協定(FTA)に違反するとして、国際仲裁に訴える意向を韓国政府に通知していた。

 韓国外務省は27日、クーパンに対する調査と措置は「国内法と適正な手続きに基づいてなされており、(キム氏の)国籍に関係なく非差別的に進行している」と強調。大統領府の魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長は23日、米国との安保協議に「影響を与えているのは事実だ」と認め、クーパン問題と安保問題を切り分けるよう米側に求めていると明らかにした。

 しかし、クーパン問題を巡る対立は、両国の与党議員同士の非難の応酬にまで発展した。米連邦下院の保守派議員連盟「共和党研究委員会」の所属議員54人は21日、米国企業に対する差別的措置を中止するよう求める書簡を康京和(カン・ギョンファ)駐米大使に送付したと発表した。これに対し、韓国の進歩系与党「共に民主党」の所属議員は在韓米国大使館に連名での抗議書簡を送る意向を明らかにしており、対立が収束する気配は見えていない。【ソウル日下部元美】

毎日新聞

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