ウユニ塩湖でも水不足 重要鉱物の採掘で、水資源が危機 国連大

2026/04/29 13:01 

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 スマートフォンや電気自動車、人工知能(AI)など現代生活に欠かせないリチウムやコバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物の採掘現場で、深刻な水不足や環境汚染が広がっているとの報告書を29日、国連大学が発表した。産地のアフリカや南米などの途上国と、資源開発を担う先進国側との経済格差の広がりも指摘。汚染の監視強化や法的拘束力のある国際基準を定めるよう提言している。

 各国で公表されているデータや報告書などをまとめた。国際エネルギー機関(IEA)の推計をもとに、重要鉱物の需要は2050年に21年比で4倍に急増すると見込んだ。

 鉱物資源の採掘には大量の水を使う。電池などに用いられるリチウムの場合、1トン生産するのに約190万リットルの水が必要とされる。24年の世界のリチウム生産量は約24万トン(非公表の米国を除く)で、必要な水は推計4560億リットル。これは、サハラ砂漠以南のアフリカで暮らす約6200万人が1年間に家庭で使用する水の総量に匹敵する。

 リチウムを産出する南米チリのアタカマ塩湖では、地域で消費する水の最大65%をリチウム生産が占め、地下水が枯渇。井戸の水位は1990年から15年にかけて最大9メートルも低下したという。

 標高約3700メートルのアンデス高地にあり、鏡のような湖面に映る空の絶景が観光客に人気の南米ボリビア・ウユニ塩湖でも、リチウム採取が水不足を招き、主食の雑穀「キヌア」の栽培が難しくなったという。

 水質汚染も深刻だ。重要鉱物を採掘・抽出する過程で使う有毒化学物質が周辺環境に流出する事例が頻発。アフリカのコンゴ民主共和国やザンビアの鉱山周辺では、川や湖の魚が死んで漁獲量が減っているという。

 コンゴの鉱山に近い産科病院では、鉱山から離れた地域と比べ、胎児の先天異常の発生率が高かったとする研究報告もあるという。

 重要鉱物の大半は「グローバルサウス」と呼ばれる途上国や新興国を中心に採掘されるが、地元が得る経済的利益は限られる。報告書は「恩恵を受ける側と負担する側との不均衡が懸念される。このままでは不平等が固定化し、被害地域はさらに被害を受け続ける恐れがある」と警告する。

 重要鉱物は太陽光パネルや風力タービン、電気自動車用電池など社会の脱炭素化に不可欠だが、国連大学のチリツィ・マルワラ学長は「清潔な水へのアクセスを損ね、貧困を深刻化させ、健康上の負担を採掘地域に集中させるのでは、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った移行とは言えない」と指摘した。【岡田英】

毎日新聞

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