「明日のご飯が心配」 シングルマザーたちの悲痛な叫び 衆院選

2024/10/21 13:00 

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 各党の候補者らが舌戦を繰り広げている衆院選。自民党派閥の裏金事件を受けた政治改革など「政治とカネ」問題への対応が注目を集めるが、物価高などに苦しむ市民への支援は待ったなしの状況だ。「明日のご飯」を心配する人たちがいることを知ってほしい――。シングルマザーを取り巻く環境は厳しく、現場からは悲痛な声が上がる。

 「お菓子やぜいたく品は買わない生活です」。そう話すのは、大阪府和泉市の契約社員の女性(41)だ。小学5年~高校1年の3兄弟を育てるシングルマザーで、月収は手取り16万円ほど。食べ盛りの子どもたちは米の消費量も多く、おかずには割安な豆腐やもやしが食卓に並ぶことが増えた。物価が上がっても給料は増えず、貯金も底をついた。「子どものために残しておきたい手当などのお金も生活費に回さざるをえない状況で、毎日が自転車操業」と話す。ひとり親世帯に支給される児童扶養手当は、2人目以降の子どもは1人目より減額される。「同じ人間なのに、何番目の子かで差が出るのはなぜなのか。同額にしてほしい」と要望する。

 ◇そのお金でご飯が買えると思うと……

 0、5歳児を保育園に預け、パートで働く大阪市のシングルマザーの女性(43)は、子育て支援を切望する。「親も他界していて、頼れる人がいない。自分が風邪を引いたときなど、本当にしんどい」。夜泣きが続いて、朝まで抱っこして寝られない日もある。子どもが熱を出したりすると、「しんどくても食べやすいゼリーを買ったりする。ベビーフードに頼らざるをえない日もある」。出費は増え、おむつやおしりふき、ミルクなどの日用品だけでも月に数万円はかかる。

 産後に、地域住民が乳幼児らを預かる「ファミリー・サポート・センター事業」を利用したが、1時間当たり800~900円の利用料金がかかる。「そのお金でご飯が買えると思うと無理して使わない。高額なベビーシッター代はとても払えない」。おむつの宅配や、ベビーシッター代を一部補助する施策を実施している自治体もあると聞き、「自治体によって差があるのはおかしい。どこでも同じように支援を受けられるようになれば」と願う。

 ◇はざま世帯への支援を

 10月から児童手当の支援拡充で所得制限が撤廃されたが、「制限がかかるほど稼いでいない。非課税世帯でもなく、恩恵が受けられないはざまの世帯への支援をお願いしたい」。小学5年~高校1年の子ども3人を一人で育てる大阪府枚方市の派遣社員の女性(45)はそう嘆く。フルタイムで働いて月収は手取り16万円ほど。ボーナスはなく、貯金もない。収入を増やすため、深夜にダブルワークをしたいが、子どものことを考えて検討中だ。この夏は熱中症にならない範囲でクーラーをつけずに過ごし、食事は4人分作らず、子どもにおなかいっぱい食べてもらい、自分はその残りで済ます生活だ。

 元々は正社員で働いていた。3人目ができ、さらに子どもの熱で仕事を休んだりすることを考えると肩身が狭く、退職した。「女性活躍」という言葉はよく聞くが、「正直、子どもを産むと女性は働かせていただいているという感じがする」とこぼす。

 ◇投票には消極的

 一方、実際に衆院選に投票に行くかというと、取材した3人中2人が「誰がなっても変わらない気がする」と消極的だった。人材サービス会社「ビースタイル」(東京)の調査機関「しゅふJOB総研」が9月に会員の女性525人にアンケート調査した結果、選挙に「絶対に行く」と回答したのは約半数。それ以外の人に行かない理由を聞くと、「支持したい立候補者や政党がないから」が約4割、「選挙に行っても何も変わらないから」が約3割に上ったという。

 2017年にNPO法人「Happy mam」(大阪府門真市)を立ち上げ、ひとり親世帯と面談し、食料配布などきめ細かな支援をしてきた玉城ゆかり代表理事(50)は「本当は、選挙に行って変わると思いたい。今、苦しい人たちは将来の施策ができたとしても、子どもはどんどん大きくなって支援の対象から外れてしまうこともある。政治家の方には現場を見て、スピーディーな支援をお願いしたい」と力を込めた。【芝村侑美】

毎日新聞

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