江藤拓農相更迭へ 石破首相調整 「コメ買ったことない」発言

2025/05/20 23:25 

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 石破茂首相は20日、「コメを買ったことはない。売るほどある」などと発言した江藤拓農相を辞任させる検討に入った。政権幹部が明らかにした。コメの不足と価格高騰に歯止めがかからない中、担当閣僚として不適切な発言だとして与野党から批判の声が出ていた。

 昨年10月に発足した石破政権で、不祥事による閣僚辞任は初めて。内閣支持率の低迷が続き、7月の参院選を控えて反転攻勢の兆しが見えない中、政権に打撃となるのは必至だ。

 江藤氏の発言を巡っては、立憲民主党の野田佳彦代表が20日の党会合で「(江藤氏は)その任にあらずだ。(21日の)党首討論で厳しく任命者にも問いただす」と追及する考えを表明した。その後、立憲、日本維新の会、国民民主など野党5党の国対委員長が国会内で会談し、退任を求める考えで一致。首相らが退任の判断をしない場合、農相不信任決議案の提出も検討することを確認した。

 衆院では野党が過半数を占め、提出されれば可決される可能性が高い。閣僚不信任決議に法的拘束力はないものの、国会審議など政治的影響は大きいため、与党内にも辞任は不可避との声が出ていた。

 野党国対委員長の会談に先立つ衆院本会議で首相は「農政の課題が山積する中、解決に向け全力を挙げるべき時だ。職務にまい進し課題の解決に全力を尽くさせたい」と述べ、江藤氏を続投させる意向を強調。江藤氏の発言について「消費者、生産者双方に配慮を欠き、極めて不適切なものであった。任命権者は私で、おわび申し上げたい」と陳謝していた。

 石破政権はこれまで少数与党の下でも、当初予算審議で一部野党の要求を受け入れるなど、野党を分断させる戦略が奏功してきた。だが、今回は野党が結束して辞任を求める状況となり、抗することができなくなったとみられる。

 与党内からも「コメが高止まりし国民の怒りが頂点に達している中、極めて不適切な発言」(公明党の西田実仁幹事長)、「政権に厳しい目が注がれている中、緊張感を欠いた発言」(自民党の鈴木俊一総務会長)など厳しい声が上がっていた。

 江藤氏は18日の佐賀市の講演で「私もコメを買ったことはありません。支援者の方々がたくさんコメをくださるんですね。まさに売るほどあります」と発言。「大変なんですよ、もらうのも。石とか入っているんですよ」とも語った。

 江藤氏は2019年に第2次安倍政権の農相として初入閣。昨年衆院選で農相だった小里泰弘氏が落選したことを受け、再登板した。衆院宮崎2区選出で当選8回。父の故隆美氏は自民党衆院議員で総務庁長官を務めた。【池田直、光田宗義】

毎日新聞

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