物価高対策以外にも… 万博会場で聞いた有権者の声 参院選
参院選が公示された3日、各地で論戦がスタートした。物価高対策や少子高齢化社会にふさわしい社会保障制度のあり方などが主な争点。「政治とカネ」や選択的夫婦別姓など、先の通常国会で積み残しになった課題もある。有権者は現状をどう受け止め、政治に何を求めるのか。開催中の大阪・関西万博を訪れた人々に、大阪メトロ夢洲(ゆめしま)駅(大阪市此花区)周辺で聞いた。
◇給付か減税か、それとも…
与党は物価高対策として、国民1人当たり一律2万円(子どもや住民税非課税世帯の大人は同4万円)の給付を打ち出した。一方、野党は消費税の減税・廃止を訴え、いずれも「バラマキ」との批判が上がる。
大阪府吹田市の無職、森崎ことみさん(74)は「所得の高い人には必要ないのでは」と、一律給付に疑問を投げ掛ける。最近、近所の小中学校で「一日の食事が給食だけの子どもがいる」と聞いたといい、「バラマキはやめて、将来世代のための財源に充ててほしい」と訴えた。
奈良市の無職、増野敬明さん(66)は「現金がもらえるのはうれしいが、2万円でどうなるものでもない」と焼け石に水だと主張する。「現金給付は将来にどれほどツケを回すのか。結局、付け焼き刃で根本的な解決にならない。物価高なのだから、食料品の消費減税の方がましだ」と話した。
給付にかかる人件費など、自治体の負担に目を向ける声も。名古屋市の会社員、田村弥生さん(66)は「膨大な事務経費がかかるのではないか。経費を使ったバラマキほど無駄なものはなく、国民のプラスにならない。定額減税のようなやり方で手取りが増える方が良い」と提案した。
若者の目にはどう映るのか。
和歌山大4年の宮本照久さん(21)は「現金給付は選挙前の票集めだと思う。元をたどれば国民の血税ではないか」と一刀両断。「物価高で本当に困っている人のことを考えれば、減税の形で還元する方が公平だ」と語る。一方、同大4年の岩崎亘希さん(21)は「減税は時間をかけて取り組む必要があり、財源確保が大変だと思う」と指摘した。
◇「手取り増」
物価の上昇に賃上げが追いつかず、社会保険料などの負担が重くのしかかる。そんな中、「手取り増」の訴えは現役世代の心をつかむのか。
大阪市西成区の会社員、藤田一則さん(51)はいわゆる「就職氷河期世代」だ。大学の紹介でなんとか就職できたが、25歳で倒産を経験。その後、苦労して再就職したという。時代は変わり、今は「売り手市場」。「職場では最近、若手の手取りが増えている。良いことだと思う一方、少し不公平な気もする」とこぼす。
堺市の男性会社員(49)も「採用が絞られ、少ない人数で会社を支えてきた」との自負がある。「非正規で働くことになった友人もいる。会社の同世代は義務感が強く、転職したくても辞めずに残っているが、最近は若手の退職が目立つ」と嘆く。「仕事量は増える一方なのに賃金は上がらない。せめて高い社会保険料を下げてほしい」と訴えた。
◇政治とカネ
先の国会では自民党派閥の裏金事件を巡って参考人招致が行われたが、実態解明には至らなかった。企業・団体献金の見直しも、原則禁止を求めた立憲民主党などと、維持を主張した自民が折り合わず、先送りされた。
「選挙の度に問題になっている印象だ」。大阪府高石市の会社員、油井哲也さん(51)はうんざり顔だ。「献金をもらう側の政治家がルールを決めても、抜け穴があるのでは意味がない。クリーンな政治になってほしい」と願う。
大津市のパート従業員、清水裕子さん(62)も「企業と結びつくことで、献金が賄賂のように見えてしまう」と不信感を募らせる。「政治にお金がかかりすぎるのが原因では。使い道は全てオープンにし、個人献金を増やす議論を深めた方がいい」
大阪市西淀川区の会社員、平本利浩さん(61)は「根本には『バレなければいい』という雰囲気があるのだろう。(不正には)政治家本人はもちろん、所属する党の党首も辞職するくらいトップの責任も厳しく問うべきだ」と求めた。
◇選択的夫婦別姓
夫婦同姓とするか、婚姻前の姓を名乗り続けるかを選べる選択的夫婦別姓を巡っては、衆院で28年ぶりに法案が審議された。だが、与野党の足並みがそろわず採決は見送られた。
最近、結婚したばかりという大阪市浪速区の会社員、牛丸優奈さん(29)は夫の姓になったが、職場ではなじみのある旧姓を名乗っている。「現行制度で困っている人もいるのではないか。若い世代は『家を守る』という古い価値観も薄いので、夫婦別姓の考えは理解できる」とした。
千葉県松戸市の会社員、横嶋成亜(せいあ)さん(24)は、結婚したらパートナーとは同姓が良いと考えている。一方、「制度の導入で自分にデメリットが生じるとは思わない。希望する人には別姓を選べるようにするのがいい」と賛成する。
一方、神戸市垂水区のアルバイト、北野雅子さん(67)は導入に否定的だ。「結婚後も職場で旧姓を使ってきたが、特段不便はなかった」と振り返る。「(別姓を認めることで)生まれてきた子どもの姓をどうするのかという問題も起きる。なぜ制度を変えないといけないのか」と語った。【根本佳奈、林みづき、露木陽介、芝村侑美】
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