土門拳賞の写真家・鬼海弘雄さん、故郷の山形で回顧展 初公開作品も
山形県寒河江市(旧醍醐村)出身で土門拳賞を受賞した鬼海弘雄さん(2020年死去)の回顧展「時を越える繋(つな)がり」が同市美術館で開催されている。
1945年に生まれた鬼海さんは法政大学で哲学を学び、トラック運転手や遠洋マグロ漁船乗組員などを経て写真家となった。73年から東京・浅草寺を舞台に市井の人々を45年にわたり撮影。生涯を通して「人間とは何か」を問い、ファインダーに収め続けた。代表作の同シリーズ「PERSONA(ペルソナ)」で2004年、土門拳賞を受賞し、国内外で高く評価されている。
回顧展では浅草寺の肖像写真をはじめ、マグロ漁船乗組員や夜間学校のほか、歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんを撮影した作品など38点を展示。初公開のカラー写真もある。作品の間には「マグロ船に乗ってる時も思ったが、体を動かして働いている人はとても魅力的だ」「写真を撮るということは、社会との繋がりがなければならない」といった鬼海さんの言葉が添えられている。
また、寒河江市で開かれている「SAGAEまちなか芸術祭」の一環で、商店や駅などにも鬼海さんの作品が多数展示されている。2メートルを超える浅草寺の肖像写真に、道行く人たちは驚き、魅せられていた。
同市の森本諒子美術館専門員は「大きなプリントが多いので、作品を体感して、写真の魅力を感じてほしい」と語る。回顧展は入場無料で11月4日まで(10月9、23日は休館)。【竹内幹】
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