医師派遣、学生交流、市民が続ける支援 ガザ戦闘1年、関心薄れ懸念
パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから、7日で1年となる。日本の支援団体はこの1年間の活動を振り返り、一刻も早い停戦を願っている。
学生団体「日本・イスラエル・パレスチナ学生会議」は2003年の設立以来ほぼ毎年、イスラエルとパレスチナの若者を日本に招待し、対話の場を作ってきた。今年は開催できるか不安もあったが、「こんな時だからこそ開催しなければ」と8月に両地域の学生ら計7人を日本に招き、2週間寝食を共にした。
長崎で被爆者から体験を聞いたり、両地域の課題を議論したりして交流を深めた。戦闘が始まった23年10月7日以降、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区とエルサレムの間は検問所の制限が厳しく行き来が難しい。交流の最後には、両地域の学生らが「向こうでは会えないよね」と言いながら抱き合う姿も見られた。
学生会議事務局の国際基督教大4年、平田ひかりさん(21)は「現地ではお互い関わりはないが、日本に来て対話ができて良かった。早く戦闘が終わってほしい」。滞在中のプログラムを考えた同大3年の友沢陽菜さん(20)は「国や地域ではなく個人としてつながることができてうれしい。未来の平和への種まきになってくれたら」と願った。
「人間が生活できる環境ではない」。NPO「パレスチナ子どものキャンペーン」(東京都新宿区)エルサレム事務所代表の手島正之さん(50)は悪化の一途をたどっている現地の惨状をそうみている。
手島さんは現在、日本から現地スタッフ3人と連絡を取り合いながら支援に当たる。現地の支援団体を通じて市民への物資配布や現金支給の活動をしている。昨年末からは一時約150万人が避難していたガザ地区南部ラファで飲料水や衛生用品を配ったり炊き出しをしたりしていた。
だが、5月以降はイスラエル軍のラファへの地上侵攻により、スタッフを含むほとんどの住民が避難を余儀なくされ、現在はガザ地区中部で活動する。ガザへの物資の搬入もイスラエル軍によって極端に制限される事態となっている。清潔な水が手に入りにくく、下水も垂れ流しで、感染症のリスクが高まっており、医薬品不足も深刻だという。
手島さんが危機感を抱くのは日本国内の関心の薄れだ。「即時停戦を訴えてきたのに状況は悪化し続けている。最近のニュースの中心はイスラエル軍のレバノン侵攻などに移りつつあるが、ガザでは日常的に爆撃が続いており、今生きている人もほとんどが家族や親戚を亡くしている」と説明する。その上で、「日本でも多くの地方議会で停戦を求める決議が採択されている。自分たちの住む自治体でも採択を後押ししたり、家族や友人と話したりして、日本からもガザの窮状に関心を持ち続けてほしい」と訴える。
任意団体「北海道パレスチナ医療奉仕団」の団長として約13年間、現地で医療支援などをしてきた札幌市の医師、猫塚義夫さん(77)はこの1年、「力不足」を感じてきた。
連絡を取り合う現地のパレスチナ人から「私たちは孤立を感じ始めている」と言われ、「国際社会があてにならないと思わせてしまっているのは我々のせいだ」との思いを募らせる。
イスラム排斥の動きが強まる欧州では難民支援に当たるNGOが活動から手を引く動きがあるという。猫塚さんは「医療奉仕団には多くの寄付が集まっており、反戦デモなどへの参加も途絶えない。日本は国としても国民としてももう一歩踏み込んで、不条理な戦争をやめさせる努力ができるはずだ」と強調する。
医療奉仕団はヨルダン川西岸地区を中心に6月に医療支援をした。戦闘開始後初の活動で、精神的ケアの必要性を感じたという。11月下旬から2回目の活動を始める予定で、前回の倍以上の10人程度が交代で現地に入り、精神科医も初めて参加する。猫塚さんは「私たちはパレスチナを見捨てない、連帯するという声を届けたい」と力を込める。【島袋太輔、西本紗保美、片野裕之】
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