慶大生らが開発、オンラインゲームで学ぶ闇バイト 授業に導入

2025/01/21 11:40 

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 オンラインゲームを通じて「闇バイト」の危険性を学ぶメディアリテラシー教育プログラム「レイの失踪」を、慶応大の現役学生らでつくるスタートアップ企業「Classroom Adventure」(クラスルーム・アドベンチャー、クラアド)=東京都中央区=が開発した。2024年12月から都内の中学、高校、大学などの授業で導入され始めている。音信不通になった友人の行方を捜すゲームで、闇バイトの勧誘の手口や、一度関わったら抜けられなくなる危険性などをリアルに学べるのが特徴だ。

 クラアドは、堀口野明(のあ)さん(22)▽古堅陽向(ふるかたひなた)さん(23)▽今井善太郎さん(23)――の慶大生3人が共同で創業した。23年にリリースした、謎解きゲームを通じてネット上の偽・誤情報を見抜く能力を身につけるプログラム「レイのブログ」は、日本の中学、高校、大学だけでなく米国や台湾、ベトナムなどの教育機関でも導入され、受講総数は1万人を超えているという。24年12月には都主催のスタートアップコンテストで最優秀賞に輝いた。

 今井さんによると、「レイのブログ」を実施した学校の教諭から「闇バイトについて子どもに教えるのが難しい」との声が寄せられたことを受けたのが、「レイの失踪」を開発するきっかけだった。今井さんらもネット交流サービス(SNS)などで、携帯電話の代理契約や薬物など犯罪との関連が疑われるアルバイトの募集を見たことがある上に、「知り合いの知り合い」が逮捕されるなど、闇バイトの危険を身近で感じていたことも、背中を押したという。

 プログラムはゲームと講習の2部構成だ。ゲームではパソコンやスマートフォンを使い、実在するものを模したSNSに残された投稿や会話を手がかりにして、ゲームのキャラクター「レイ」の行方を捜していく。レイをだまして取り込み、脅し続けていた闇バイトの雇い主を突き止めるまでの過程を通して、なぜだまされてしまうのか▽なぜ抜け出せないのか▽何をすべきなのか――の三つのステップを体験し、闇バイトの知識が身につくという。

 さらに、ゲームの終了後の講習で、今井さんらが闇バイトに絡んだ事件の実例などを挙げながら、勧誘の手口や見抜くコツなどを解説し、さらに知識を深めてもらう。

 1月9日には、学習院大経済学部(東京)で、鈴木賀津彦非常勤講師が開く「スタディ・スキルズ講座」の一環で行われ、学生約30人が参加した。SNSでゲームに出たのと似たような広告を見たことがあったという同大1年の大澤菜央(なお)さん(19)は「こうやって闇バイトに落ちていくんだということと、いったん入ると抜け出せなくなることが実感できた」。同級生の渡辺歩乃実(ほのみ)さん(19)は「ふだん使っているものによく似たSNSなどを使って実際に調べる経験ができたので、話を聞くだけよりも糧になった」と話していた。

 クラアドは、学校以外に、自治体の防犯教室などでの活用も呼びかけている。プログラムの詳細や問い合わせはクラアドのサイトから。【斎藤良太】

毎日新聞

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