公立高世帯の学習費、無償化前の水準超え 23年度は平均59.7万円

2025/02/22 07:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 2023年度に公立高校(全日制)に子どもが通う保護者が学習費として支出した額は平均で計59万7752円となり、公立高授業料の無償化が始まった2010年度より前の支出額を超えた。慶応大の赤林英夫教授(教育経済学)が、文部科学省による学習費調査の結果を精査して判明した。

 授業料負担が減った後も教材費や制服代、塾代、通信教育費などの支出が膨らんだことが背景にあり、家計における学習費負担は大きくなっている可能性がある。赤林教授は与野党が議論している私立の無償化について「無償化しても結局、支出は増える可能性があり、少子化対策にはならない」と指摘している。

 文科省の調査は1994年度から原則隔年で実施されており、幼稚園児から高校生までの保護者が1年間に支出した子ども1人当たりの学校教育費や学校外活動費などをオンラインと郵送で聞き取っている。23年度調査で有効回答した公立高生の保護者は2775人だった。

 学習費の総額は公立高無償化が始まる前の08年度が51万6186円。無償化された10年度は授業料の支出額が0円になり、総額も39万3464円に下がった。

 一方、学習費のうち、教材費や制服代などを含む「授業料以外の学校教育費」は14年度調査から増加が続き、23年度は30万6258円。また、「通信教育・家庭教師費、学習塾費」は10年度以降増え続け、23年度は16万3565円だった。

 その結果、総額もじわじわと増え、23年度は21年度より8万4781円増加。無償化導入時の10年度と比較すると20万円以上増え、08年度の額を初めて上回った。

 文科省は「調査手法の変更もあり単純比較はできない」とした上で、公立での教材費などの増加は物価高騰の影響があると分析している。

 赤林教授は、塾代などの増加の要因として、授業料負担が減少した分、塾代などに支出できるという心理が働いたり、オンライン講座の増加が支出を促したりしたとする仮説を提示。「この結果は今後、私立も含めた無償化が実現し、高校の授業料負担がさらに下がったとしても、受験のための塾代などの支出は増える可能性があることを示している。精査は必要だが、無償化は少子化対策になるとは思えない」としている。

 文科省は私立生の保護者の支出についても調査しており、学習費の総額は94年度以降、92万~105万円台で推移。増減はあるもののほぼ横ばいとなっている。【斎藤文太郎】

毎日新聞

社会

社会一覧>