全国の児童虐待相談、過去最多22万件 23年度、増加傾向続く
厚生労働省は25日、全国の児童相談所が2023年度に対応した児童虐待相談は22万5509件(前年度比5%増)だったと発表した。統計開始以降、過去最多を更新し、増加傾向に歯止めがかからない状況だ。
相談内容別で最も多かったのは、言葉による脅しや差別的な扱いなどの心理的虐待で13万4948件(59・8%)だった。このうち、子どもの前で家族に暴力をふるう面前DV(ドメスティックバイオレンス)が58・5%を占めた。次いで身体的虐待5万1623件(22・9%)▽子どもの世話をしないなどのネグレクト3万6465件(16・2%)▽性的虐待2473件(1・1%)。子どもの年齢が上がるにつれて心理的虐待の割合が減り、身体的虐待と性的虐待の割合が増える傾向にある。
主に虐待した人の割合は、実母48・7%▽実父42・3%▽実父以外の父親5%▽実母以外の母親0・4%。相談が寄せられた経路は、「警察など」が51・7%と最多で、次いで近隣・知人9・8%▽家族・親戚8・5%――だった。
虐待防止施策を担うこども家庭庁は改正児童福祉法に基づき、各市区町村で設置が進む「こども家庭センター」を中心に、子育ての相談支援体制の拡充を図る。さらに25年度からの2年間で、児童福祉司を910人程度増員する計画を策定。児相職員の定着支援も進める。
児童虐待の相談対応件数を巡っては23年、一部自治体による不適切な報告が発覚し、国が22年度分を再集計した。21年度以前については今後再調査する方針で、各年度の全体件数が変わる可能性がある。
こども家庭庁の担当者は「(児相などへの)通告が増加しており、孤立した子育て環境による負の影響が子どもに向かっている状況で、重く受け止めている」と説明する。
児相に勤務経験のある明星大の川松亮教授は「近年は配偶者間の暴力や暴言に伴う警察からの心理的虐待通告の増加が、児相の対応件数を押し上げている。虐待を減らすには、子育て支援の充実が欠かせない。こども家庭センターを過半数の市区町村が開設したが、内実はこれから。家庭訪問型支援や、親が子どもとの関わり方を学ぶ機会の提供など、民間と協力した虐待予防の仕組みを作るべきだ」と指摘する。【塩田彩、黒田阿紗子】
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