トランプ政権の自動車関税 米ビッグ3は株価下落、「唯一の勝者」は

2025/03/28 08:49 

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 27日のニューヨーク株式市場で、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ステランティスの大手自動車3社(ビッグ3)の株価がそろって下落した。前日にトランプ政権が発表した25%の自動車関税が、業績悪化要因になると懸念された。一方、電気自動車(EV)大手テスラの株価は上昇。米国向けが全て国内生産で「関税の影響が軽微」との見方が広がった。

 最も株価を下げたのは、メキシコなど海外からの輸入台数が多いGM。終値は前日比3・75ドル(7・36%)安の47・20ドルで2週間ぶりの安値に沈んだ。下げ幅は一時9%を超えた。

 フォードは3・8%安、ステランティスは1・2%安で取引を終了。両銘柄とも下げ幅は一時4%を超えた。

 3社は原則ゼロ関税で輸出入できる「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を前提に、生産拠点や部品供給網を3カ国全体で構築しており、メキシコ、カナダからの輸入に関税を課されれば深刻な影響が出る。

 トランプ政権は今月上旬、今回の自動車関税とは別に発動したメキシコ、カナダへの一律25%関税の適用を、USMCAに適合した製品に限って延期すると決定済み。

 これを受け3社の株価は持ち直しつつあったが、適用除外のない自動車と自動車部品への25%関税が4月3日に発動されれば経営への打撃は免れない。

 大手調査会社によると、GM、フォードは新たな関税に伴う値上げなど収益改善を講じたとしても、今年度の営業利益が30%減る可能性があるという。

 元フォード最高経営責任者(CEO)のマーク・フィールズ氏は27日、米CNBCテレビに出演し、関税や部品調達コストの上昇に苦しめられると同時に値上げによる販売減の恐れもあると分析。「半導体不足に陥った新型コロナウイルス禍の時よりも大きな衝撃となる。問題がいつまで続くか分からないためだ」と述べた。

 更に「欧米メーカーの収益性は低下していく。彼らが今後の投資戦略に頭を悩ませる一方、ライバルの中国メーカーは成長戦略に専念できるようになるだろう」との見通しを示した。

 ビッグ3と対照的な株の値動きを見せたのがテスラだ。一時7%超上昇し、終値は前日比1・07ドル(0・39%)高の273・13ドルとプラス圏内を維持した。

 テスラは米国向けEVの100%を西部カリフォルニア州と南部テキサス州の工場で生産し、国内の部品調達比率も高い。このためたとえ関税を引き上げられても、業績の影響が極めて小さいとみられている。

 テスラを率いるイーロン・マスクCEOは、昨年11月の大統領選勝利に貢献したことでトランプ氏と「蜜月関係」にある。

 最近の株価下落局面では、トランプ氏がテスラ車を個人的に購入してみせ、ラトニック商務長官がテスラ株の「買い」をテレビインタビューで推奨するなど、露骨なテスラ推しを展開している。

 米ブルームバーグ通信は26日、「マスク氏のテスラ、トランプ自動車関税で唯一の勝者」との見出しの記事を配信。米欧日の主要自動車メーカーに加え米消費者も値上げで打撃を受ける見通しの中、テスラだけ「浅い傷で済む」との見方を示した。

 トランプ氏は自動車関税を発表した26日、記者団に今回の関税とマスク氏との関係を問われると「彼はビジネスに関して、私に何かを頼んだことは一度もない」と説明。利益相反の見方を否定した。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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