防火不備の住宅「数百棟」か さいたま市が住宅メーカーを調査

2025/03/29 18:30 

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 さいたま市の住宅メーカーが販売した戸建て住宅で、本来は屋根裏などに設置が必要な石こうボードや断熱材がなく、建築基準法に違反している疑いがあることが判明した。

 毎日新聞が会社関係者から情報提供を受け、専門家に調査を依頼して現地で確認した。防火性能が低下する可能性があり、情報を把握した市は会社側から事情を聴くなどして調査を進めている。

 このメーカーの関係者は「以前から同様の不備があり、合計では数百棟に上る」と指摘している。

 ◇屋根裏に木材むき出し

 毎日新聞は、1級建築士で住宅検査などを行う「ストック建築事務所」(埼玉県戸田市)の牛山友広代表に調査を依頼。2024年11月下旬、このメーカーが手がけたさいたま市内の木造2階建て住宅を、住人の協力を得た上で調べた。

 自身で屋根裏のスペースを確認した牛山氏によると、屋内側に設置が必要な石こうボードなどがなく、木材がむき出しの状態だった。牛山氏は「建築基準法の規定を満たしていない可能性が高い」と指摘する。

 ◇早く延焼する恐れ

 建築基準法などは、準防火地域の住宅では、外壁の内側に一定の厚さの石こうボードや断熱材など「防火被覆」の設置を義務付けている。

 周辺で火災が起きても30分以上耐えられる性能が求められ、使用する建築資材に応じて防火被覆をしていないと、早く延焼する恐れがある。

 この住宅は準防火地域にあり、使用されている資材で防火基準を満たすためには、一部の柱と梁(はり)を除いて屋内側には防火被覆が必要になる。

 ◇社長「必要あれば直す」

 建築設計に詳しい明海大不動産学部の中城康彦教授は「現場の写真や図面などの資料から判断する限り、建築基準法で定められた石こうボードが設置されていない」と話す。

 国立研究開発法人建築研究所の成瀬友宏・防火研究グループ長は「外壁と軒裏部分は隣地の火災の影響を受けやすく、屋根裏に火が入ると建物全体に延焼する。屋内側の防火被覆も含めて性能が確認された仕様の外壁により、防火性能を高めることが必要だ」と指摘する。

 建築基準法は、市などが建築物に関して設計・施工者に報告を求めることができると定めている。さいたま市の担当者は「法令違反の可能性があり、調査を進めている」としている。

 取材に応じた住宅メーカーの社長は施工不備に関して「いろいろな見解があり、(行政と)やりとりをしている」と説明。「お客様に真摯(しんし)に対応し、必要があれば必ず直す」と述べ、防火試験を行うことも検討しているという。【安達恒太郎】

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