千葉・館山はなぜ保養地に? さきがけとなった元軍人・金近虎之丞
明治維新後の近代化は、都市の発達や交通網の整備とともに、人々の生活に保養や観光をもたらした。東京に近く、海に囲まれた温暖な気候の房総半島は避暑や海水浴に訪れる人々でにぎわい、観光案内などで「楽土」とも称された。文化人や実業家らを引きつけてきた「楽土房州」の郷土史を研究する人々の姿を紹介する。【小林多美子】
波静かで、海面が鏡のように美しいことから「鏡ケ浦」と呼ばれる館山湾(千葉県館山市)の周囲には、実業家や芸術家、軍人らが別荘を構えた。同市が保養地となるさきがけとされるのが、山口県出身の元陸軍軍人、金近(かねちか)虎之丞(とらのじょう)(1840年代前半~91年)だ。明治期に療養のため同市に転住し、鏡ケ浦を臨む高台の北下(ぼっけ)台で、引き入れた海水と真水につかる「汐(しお)湯」を備えた保養施設「金虎(きんこ)亭」を営んだ。
1885年に日本初の海水浴場が開設された神奈川県大磯町は、元陸軍軍医総監の松本順が療養や健康増進法として海水浴を推奨したのを機に、政財界人らの別荘地となった。房州でも同時期に保養別荘地としての歴史が始まった。
金近の調査研究をしているのが、小宮寿夫さん(66)=南房総市千倉町=だ。富里市出身で、東京都杉並区立図書館で司書を務めた後、40歳のころ千倉に移住した。司書の経験を生かした文献調査に加え、研究機関がウェブ上で資料を公開するデジタルアーカイブを活用している。
金近の調査は2019年に始めた。館山市立博物館のウェブサイトで見つけた金近の短い紹介に興味を抱き、博物館に照会する。だが、地元出身ではない金近の資料は少なく、詳細は分からなかった。そのため、自身で資料収集を始める。
すると国立公文書館アジア歴史資料センターのアーカイブで、金近が1887年9月15日に、陸軍大臣の大山巌宛てに提出した「海水湯風呂及蒸風呂」の営業願を見つけた。番地も記されており、金虎亭の開設時期と場所が特定できた。博物館に保管されている過去の土地台帳から、金近による当該の土地の所有も確認する。金近の軍歴は当時の官吏・軍人を掲載した職員録などで調べた。
さらに、過去の土地台帳には、東京駅丸の内駅舎などの設計で知られる建築家、辰野金吾の息子で仏文学者の隆ら著名人が散見された。「土地所有者の住所が地元以外の人名を調べれば、館山に別荘を持つなどした人物を解明できるのでは」と考えた。
明治、大正期を中心に人名を抽出し、当時の紳士録などで調べた。土地を所有していても実際に居住したかは不明な人物もいるが、抽出した人物は館山市で300人近くに上った。金近の影響か、明治期は軍人が多く、ほかにも学者や医者、芸術家など幅広い人物が土地を所有していた。
24年にはウェブサイト「安房文庫」を開設し、安房地域を訪れた文人らの日記や随筆などを紹介している。
金近の足取りを追う中で、小宮さんは金近の玄孫にあたる雲英(きら)洋一さん(66)=横浜市=とつながった。雲英さんは山口県を訪れて金近について調べていた。20年に館山市立博物館に照会すると、小宮さんを紹介されたという。雲英さんは「地元で調査研究の対象になるような人物なんだと、誇らしい思い」と話す。
小宮さんは安房地域の保養文化の歴史を花開かせた人物として、金近の本をまとめたいと考えている。【小林多美子】
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