JR西日本 事故後の入社が7割超 模索続ける安全最優先の社員教育

2025/04/25 17:11 

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 JR西日本は20年前の福知山線脱線事故を受け、安全を最優先とする企業への変革を模索してきた。事故後に入社した社員が多くを占める中、事故を教訓とする社員教育に努めている。

 事故から3年後となる2008年4月、「安全基本計画」を策定。社員からの報告を抽出、評価して重大事故などにつながる可能性を取り除く「リスクアセスメント」を導入した。以降5年ごとに安全に関する計画を発表している。

 23年4月に公開された計画では、27年度までに乗客が死傷する列車事故をゼロにすると掲げている。初年度だった23年度はゼロを達成した。

 ハード面の設備投資として、23年度に投じられた安全対策費用は1001億円。全体額(1633億円)の6割を超えており、災害に備えた高架橋の補強やホーム柵の整備などに充てられている。

 乗客の安全を確保するためには「列車を止める」という対策も講じている。大型の台風通過などの際、長時間の立ち往生や駅構内の混雑を避ける目的で、「計画運休」を運用するようになった。

 ソフト面では「安全最優先の企業風土」への転換を図っている。過去のケースから安全に向けた教訓を学ぶ「安全考動(こうどう)研修」を実施。脱線事故の現場に整備した「祈りの杜(もり)」を訪れるほか、21年からは研修の中で社員同士のディスカッションも取り入れているという。

 事故後に入社した社員は約1万7600人で、全体の7割以上となっている。長谷川一明社長は18日、報道各社の取材に「当時を知る社員が少なくなる中、事故現場での研修のほか、遺族や負傷者の講話を聞く取り組みを続けることで、安全への意識を深めることが重要だ」と語った。【小坂春乃】

毎日新聞

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