石綿露出の能登ホテル 1000人以上が周辺でボランティア活動

2025/04/25 19:55 

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 能登半島地震とその後の豪雨災害で被害を受けた石川県珠洲市のホテル海楽荘で、アスベストの一種「青石綿」が露出していた問題で、ホテル周辺で延べ1000人を超えるボランティアが活動していたことが、ボランティア団体への取材で分かった。専門家は「短時間であればそれほど心配する必要はない」としたうえで、中皮腫などを発症する場合も長期間かかるため、作業の記録を残すことが重要と呼びかけている。

 ホテルは、2024年1月の能登半島地震で被災。同年9月の豪雨災害で建物内に土石流が流れ込んだ。この時に石綿が露出したとみられるが、周辺には約2メートルの土砂が積もり、経営者の男性も死亡したため、状況を確認できなかった。土砂をかき出す作業には多くのボランティアが参加。石川県は詳しい人数を把握していないが、ボランティア団体によると、今年1月下旬時点で延べ1000人に達していたという。

 土砂の撤去後、NPO法人「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京都)の永倉冬史事務局長らが現地調査したところ、はりや柱に石綿が吹き付けられ、一部は地面に落ちていた。ボランティアが撤去した土砂に石綿が含まれている可能性もある。永倉さんは「石綿はこれくらいの量なら安全という基準はないが、屋外作業で短時間ではそれほど心配する必要はない」と説明。「万が一に備え、作業内容や日時、天候などを記録しておくことが大切だ」と話している。

 一方、石川県の調査で、現場の吹き付け材から23%の青石綿が検出された。法令上の石綿製品は、1975年に石綿の含有割合が5%超、06年からは0・1%超とされた。今回のホテルは1968年に建設された。77年に今の経営者側が買ったが、当時は告知義務がなく、石綿使用を知らなかったとみられる。永倉さんは「被災した経営者に石綿対策を任せるのは無理だ。県や国が支援に乗り出すべきだ」と話している。

 永倉さんは、東京都築地市場の解体工事(18~24年)に伴う石綿除去で都から第三者の立場での助言を依頼され、100カ所以上の現場に立ち入り、安全のための指摘をしてきた。【大島秀利、竹中拓実、岩本一希】

毎日新聞

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