大阪市立中・中3自殺 専門家「対策を怠ってはならなかった」

2025/05/12 16:01 

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 大阪市立中学3年だった男子生徒が2023年8月に自殺したことを受け、市教育委員会が設置した第三者委員会は12日、45件のいじめを認定し、いじめが自殺の最大の要因だとする調査報告書を公表し、市教委に提出した。

 いじめ問題に詳しい内田良・名古屋大大学院教授(教育社会学)は、第三者委が、男子生徒が通っていた中学校のいじめ認知件数の少なさを示した点を重視する。「非常に斬新で、大事な観点だ。そもそも学校がいじめに気付くことが難しいという前提を共有すべきだ。子どもたちが、やむなく隠してしまうこともありうる。本当に件数が少ない学校かもしれないが、学校側は対策を怠ってはならなかった」と述べた。

 男子生徒が亡くなる当日、水泳部員らによる打ち上げに呼ばれなかった出来事に触れつつ、内田教授は「打ち上げに呼ばれなかったと知った男子生徒の、急激な気分の落ち込みに、周囲が気付くのは容易ではない。その瞬間は学校外でのことだ。部活動の場合は、チームで行動することが多く、全体の雰囲気を壊さないよう、声を上げないケースが非常に多い。顧問の責任だけにしてしまうと、同じようなことが起きうる」と指摘する。

 いじめを深刻化させない対策として、内田教授は「子どもたちが苦しいと感じた瞬間、誰かに打ち明けようと考える思考回路を持つべく徹底して伝え続ける必要がある。クラスの担任や部活動の顧問だけでなく、養護教諭やカウンセラー、NPOなど複数の相談ルートの選択肢を示しておくことだ」と提案した。

 部活動の地域展開についても、内田教授は「この10年ほど、学校はいじめに敏感になってきた。対応のノウハウを、学校から地域社会にどう伝えるかが課題だ」と話した。【聞き手・面川美栄】

 ◇相談窓口

・#いのちSOS 

 「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。

 

 0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時

 

・いのちの電話

 さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。

 

 0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。

 

 0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。

 

・まもろうよ こころ

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

 

・こころの悩みSOS

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

 

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