「許しがたい」自民・西田氏発言に批判相次ぐ ひめゆりの塔で慰霊祭

2025/06/23 16:44 

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 沖縄県糸満市伊原の「ひめゆりの塔」前では23日、沖縄戦で看護要員として動員された「ひめゆり学徒隊」の犠牲者を悼む慰霊祭があった。自民党の西田昌司参院議員が塔の展示説明を「歴史の書き換え」と発言し、歴史認識を巡って物議を醸す中、参列者らからは「沖縄戦や日本の近現代史研究の蓄積をないがしろにするものだ」などと批判が相次いだ。

 元学徒や遺族ら約250人が参列。主催する同窓会の知念淑子会長(96)は祭文で「戦場で命を落とした人の無念さ、学徒隊に動員された人の苦しみを考えると今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです」と癒えない心の内を語った。

 同窓会は1989年に「ひめゆり平和祈念資料館」を開館し、元学徒が中心となり沖縄の実相を伝えてきた。知念さんは西田氏の発言に苦言を呈し、「沖縄では基地建設や南西諸島の軍事力強化が進行し、戦争の影は一向に薄まっていない。いつになったら平和に暮らせる日がくるのでしょうか」と不安をにじませた。

 資料館の普天間朝佳(ちょうけい)館長(65)も「元学徒隊の血のにじむような努力を踏みにじるもの」と西田氏を批判。記者団の取材にも「戦争体験者や私たちの世代にとって当たり前だった前提が、前提にならなくなってしまった」とも語り、危機感をあらわにした。

 式典には、沖縄師範学校校長の野田貞雄氏(1892~1945年)の孫、相原啓二さん(76)=横浜市=も参列した。野田氏は日本軍の命令に基づき、女子部の生徒をひめゆり学徒隊、男子生徒を鉄血勤皇隊に引き渡し、「命を粗末にするな」との訓示を残して帰らぬ人となった。相原さんは「祖父は戦時中つらい気持ちで過ごしたのだろう」と思いをはせ、西田氏の発言に「最初に聞いた時は驚き、非常に憤慨した。間違ったことを大っぴらに言うとは許しがたい」と批判した。【日向米華、竹林静】

毎日新聞

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