「トーキョー・ドリフト」と呼んだ“遊び” 19歳が法廷で語った悔恨
軽乗用車からうなるようなエンジン音が響く。速度は時速90キロまで上がり、左カーブに差しかかってもブレーキは踏まれなかった。
「ガシャン」
衝撃音と同時に、車体は逆さまになった。後部座席にいた男子大学生(19)の頭から血が流れる。目は充血し、次第に脈も弱くなっていった。まもなく病院に運ばれたが、間に合わなかった――。
昨年10月、金沢市内で同乗する大学生ら3人が死傷する事故があった。運転していた元専門学生の男性(19)は自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われ、その裁判員裁判が今月9日から金沢地裁で始まった。公判の中で語られたのは、遊び感覚の悪ふざけがもたらした大きな代償だった。
◇運転免許取得は3カ月前
「私が調子に乗りスピードを出し過ぎて命を奪った。本当に申し訳ありません」
濃紺のスーツ姿の男性は、公判の最後の陳述で背筋を伸ばし謝罪の言葉を口にした。幼い顔立ちで、どこにでもいるような「普通の若者」。遺族のすすり泣く声が響く法廷で、男性はこわばった表情で真っすぐ前を見つめていた。
起訴状によると、男性は金沢市東蚊爪町の市道を走行していたところ、左カーブを曲がり切れずに電柱に衝突した、としている。車の速度は、市道の制限速度、時速40キロの倍以上の90キロ。片側1車線、幅3・3メートルの狭い道だった。
男性は事故の約3カ月前の7月に運転免許を取り、8月に軽乗用車を買った。男子大学生と知り合ったのもその頃だった。仲間の中で免許を持っていたのは男性だけで、週に何度も仲間とのドライブを楽しんだ。
繰り返し遊んでいるうちに、男性は次第にスピードを出すようになった。スピードを上げたまま、起伏のある道路を走ると車体が浮くような感覚になり、それが楽しかったという。公道でのカーレースを題材にした映画になぞらえ、仲間内ではその“遊び”を「トーキョー・ドリフト」と呼んでいた。
「もう1回」。危険な運転をした後で、友人らがそう求めることもあった。被告人質問で、男性は「スピードを出すと盛り上がる。(友人らを)楽しませたかった」と話した。
◇遺族のやり場のない怒り
「息子は交通事故ではなく危険運転で殺されたと思っている」
公判では、亡くなった男子大学生の父親の意見陳述も行われた。父親によると、事故の日から、母親は近場以外、ハンドルを握ることができなくなり、仕事を辞めざるを得なくなった。四十九日を迎えても納骨せずに自宅で一緒に過ごすなど、遺族は現実を受け入れられない日々を送っているという。
法廷では、事故直後に男性が「やっちまったー」と話す車のドライブレコーダーも公開された。それを見た父親は「許せない。危険運転を軽く考えているから出てくる言葉だ」と、やり場のない怒りをぶつけた。男性からの謝罪はいまも拒み続けている。「被告は罪を償ってほしい。悲しいことを起こさないように重い刑罰を求める」と涙ながらに訴えた。
◇弁護側は「集団心理」の影響主張
裁判は3日間で結審した。検察は男性の運転について「被告自身が高速度走行を決意し、実行した」と指摘した上で、「友人とスリルを楽しみたいという安易で浅はかな動機で悪質だ」として懲役6年を求刑した。
一方、保護処分が相当として家裁移送を求める弁護側は、少年鑑別所が実施した鑑別結果を強調した。男性は「無口だが、仲間内では調子づきやすく、周りに流されやすい」性格で、友人らを乗せて危険運転を繰り返すうちに「集団心理」が影響したという主張だ。
悪ふざけの危険な運転が引き起こした悲惨な事故――。判決は26日に言い渡される。【島袋太輔】
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