<追跡公安捜査>警視庁公安部に捜査指導室 10月新設へ 大川原冤罪事件で再発防止

2025/07/08 06:00 

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 警視庁が公安部に「捜査指導室」を10月に新設する方針を固めたことが警察関係者への取材で判明した。化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件の反省から、捜査が適正かを恒常的にチェックする組織をつくる。国家賠償訴訟で公安部の「違法捜査」が確定したことを受けて今後取りまとめる検証結果も踏まえ、再発防止を図る。

 捜査のチェックに関して警視庁は、公安部の違法捜査を認定した1審・東京地裁判決(2023年12月)直後の24年1月、公安総務課に、課長に次ぐ理事官級の「捜査指導官」を新たに置き、暫定的なプロジェクトチーム(PT)も公安部内から集めた約20人態勢で設置した。

 公安部の各課で事件捜査を指揮する幹部の会議を定期的に開いて情報を共有しているほか、警察署の公安係の指導にも回り、適正な捜査が実施されているかを確認している。

 警察関係者によると、家宅捜索など強制捜査に着手するとの報告を受けた公安部幹部が、PTに相談するよう指示。関係する証拠の見直しをしたケースがあったという。

 今年10月には、PTを捜査指導室に移行し、公安総務課内の正式な組織として新設する。人員はPTと同程度だが、理事官に次ぐ管理官級の「室長」を置く。捜査指導官のポストは継続させ、室長の上司として捜査をチェックする。

 警察幹部は「冤罪事件を二度と起こさないよう、恒常的、継続的に適正な捜査に向けた指導をしていく」としている。

 警察行政に詳しい元警察官僚の田村正博・京都産業大教授は捜査指導室の設置を評価したうえで、「不適切な捜査を防ぐには上級幹部の対応が一番の肝になる。幹部の指揮能力の向上に向けた教育や研修もすべきだ」と指摘する。

 東京都と国に約1億6600万円の賠償を命じた5月の東京高裁判決は、公安部の捜査について「犯罪の容疑の成立に関する判断に基本的な問題があった」として違法と認定した。

 警視庁は6月、最高裁への上告断念を表明し、鎌田徹郎副総監をトップとする検証チームを設置した。再発防止策もまとめる方針。【木下翔太郎】

毎日新聞

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