30年越しの開発計画頓挫 やぶに変わり果て地権者に不満 千葉・印西

2025/07/29 07:15 

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 千葉ニュータウン開発予定地で唯一取り残された千葉県印西市の「印旛中央地区」で今春、土地区画整理の計画が頓挫した。市が区画整理に対する方針を転換し、地権者で作る団体が反発して解散したためだ。地区は開発されないまま約30年を経て、うっそうとしたやぶに変わり果てている。

【合田月美】

 印旛中央地区(印西市吉高、瀬戸)は北総線「印旛日本医大駅」の東側で、国道464号「北千葉道路」を挟んで南北に広がる約100ヘクタール。そのうち約43ヘクタールを最大地権者の市が保有し、その他に約270人の地権者がいる。

 ◇2度の中止

 市によると、当初は都市再生機構(UR)の前身である旧住宅・都市整備公団が開発する計画で、約30年前から土地を取得したものの、2007年に撤退。その後、地権者らが組合設立のため準備組織を発足させたが、進出企業が見込めないとして中止になった。

 10年に成田スカイアクセスが開業、17年に北千葉道路が開通したことを機に再び動き出す。URが先行取得した土地を市に無償譲渡し、市が土地区画整理組合による事業化を推進。19年に地権者による発起人会が発足した。

 発起人会は、データセンターや物流施設などを誘致し、事業費344億円を、土地の売却代金259億円と市の助成金85億円でまかなう計画を立てた。事業主体の組合を25年4月ごろに発足させる予定だった。

 ◇市長交代で急変

 ところが、24年7月に藤代健吾市長が就任したことで事態が急変する。市は、発起人会に事業内容や事業費の精査▽市による意向調査の実施▽地権者9割の合意などを要請した。さらに発起人会が求める補助金の予算計上を見送った。

 これに対し、発起人会が「事業の枠組みを含め、市の意向に沿って6年間にわたって進めてきた準備行為をすべて覆すものだ」として3月に解散した。

 藤代市長は取材に「多額の補助金を投入する事業で、公明正大なプロセスで進めたいと議論したが折り合えなかった」と説明。今後、事業のあり方を再検討するという。

 発起人会事務局長だった千代川宗圓さんによると、市が負担する85億円は、固定資産税などの税収増により数年で回収できる計画だったという。「地区の発展につなげようと取り組んできただけに残念だ」と話した。

 ◇広がる不満

 ある地権者は「市と調整しながら進めてきたのに、市長が代わったら透明性に問題があるように言われて納得できない」と憤る。別の地権者は「今後、市が何を計画するにしても地権者の同意を得るのは難しくなるだろう」と先行きを懸念した。

 「イノシシが出るやぶになってしまった」。ある元地権者は、開発のために提供した畑の変わり果てた姿を嘆いた。旧印旛村(現印西市)の職員に「工業団地が必要だ。売ってないのはお宅だけだ」と説得され、仕方なく売却した。「計画がないなら元の形にして返してほしい」とこぼした。

毎日新聞

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