<View+>災害状態? 1970年の大阪万博は予想を超える来場者で混乱続き

2025/07/29 08:00 

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 6421万8770人が訪れた1970年の大阪万博は大盛況だったが、予想を超える入場者数はさまざまな問題を引き起こした。

 3月15日(日)の開幕日から1週間もたたない21日(土)、1日当たりの入場者数が30万人を超えた。同26日には、目玉設備だった動く歩道で転倒事故が発生し、多くの重軽傷者が出た。翌27日には同40万人を超え、大型連休の5月3日には50万人、6月7日には60万人を超えた。

 8月下旬になると何度も60万人超えを記録。そして会期末が迫った9月5日(土)には期間中最多となる83万5832人に達した。会場内には最大50万人超が滞留。6日の毎日新聞朝刊1面には、会場が超過密都市に変貌し、「一時的に鳥取県並の人口が集中した」とある。

 閉場時間の延長や、バスや電車の増便も図られたが、午後11時になっても約21万人が会場周辺で立ち往生し、帰れなかった約4200人が会場内で野宿する羽目になったと書かれた。

 6日は厳戒態勢で、紙面でも万博協会の混乱ぶりが垣間見える。入場者数は午前9時で19万人、10時半で39万人、11時半に52万人と、これまでにないハイペース。午前10時半の記者会見で鈴木俊一・万博協会事務総長(後の東京都知事)は「この状態で行くと80万はおろか、100万人にもなる。これは災害状態だ」と声がうわずった。「テレビやラジオで来場しないよう知らせてほしい」と報道陣に呼びかけた。

 交通機関には万博行き切符の販売停止を要請。各駅で「今日は夜間入場ができない予定」と張り紙が出されたが、「それならば、昼のうちに」と逆に人々を会場へとせき立てた。午後1時には入場者数66万人で、滞留者数59万人。収容能力の限界と言われた42万人をはるかに越え、事故が起きないのが不思議と感じられたという。

 午後3時の入場者数は76万人。鈴木事務総長は午後3時半から2度目の記者会見を開き、「人命を守るには致し方がない」と夜間入場の取りやめを発表。「前売り券を購入させておいて、入場できないとは詐欺だ」という声には「なんと批判されようと私は甘んじて受けます」と応えた。一人で80万の大軍に立ち向かう、「捨てバチともいえる悲壮さがにじみ出ていた」と紙面に残る。午後5時の入場者数は77万8000人。この時点で会場は入場禁止になった。

 ところが、発表された6日の入場者数は78万3682人と入場禁止の時点より増えていた。午後5時の滞留者は37万人。「すいてきたから入れろ」と求める人の叫び声でゲート前は険悪な状態になり、身の危険を感じた警備員が入場させてしまったという。

 現在、夢洲で開かれている大阪・関西万博の入場者数を見ると、今のところは70年大阪万博ほど過密になっていない。ただ、万博では閉幕が近付くと入場者数が増える傾向がある。今後も注視が必要だ。【加古信志】

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