「兄貴の死、オイオイと男泣き」 中学生が朗読でつなぐ戦争体験
終戦80年の節目に、茨城県小美玉市生涯学習センターコスモスで10日、戦争体験講演会(太平洋戦争の体験を伝える会、小美玉市教育委員会共催)があった。戦争を経験した世代が人口の約1割まで減り、記憶の継承が難しくなる中、体験者3人が登壇し、中学生7人がこれまでの講演会で語られた体験談を朗読した。市民ら約350人が参加し、平和への誓いを新たにした。
講演会は2015年度に始まり、新型コロナ禍を除き、毎年度開かれている。今回は中学生による体験談の朗読を軸に、「次世代に記憶をつなぐことを意識して」(市生涯学習課)構成した。
美野里中2年の連川(れんかわ)凜さん(13)は、旧陸軍兵として南方に出撃し、激戦地パラオで終戦を迎えた故・山本久夫さんの体験談「パラオ島で経験したこと」を朗読した。
<昭和21(1946)年、戦地から3年ぶりのわが家へ。涙がどっとあふれました。両親を見て泣いたのではないのです。真っ先に目に入ったのは兄貴の写真と位牌(いはい)。あんなに頭がよく、体力もあり、俺の誇りだった兄貴。その兄貴の方が先に死んでいたなんて。オイオイと男泣きに泣きました>
連川さんは「以前から語り部の活動に興味があった」が、朗読は初めて。だが、兄と死別した山本さんの悲しみや憤りが連川さんの声を通して会場に響くと、目頭を押さえる人らの姿も見られた。
朗読後、連川さんは「印象に残ったフレーズは、お餅を食べた山本さんが『すごーくおいしかった』と話す場面。当時、食料がどれだけ貴重だったかが分かる。今平和に暮らせていることに感謝すると共に、私たち世代が活動することで親世代、下の世代にも興味を持ってもらえたら」と願った。
土浦一高付属中2年の神田慈生(いつき)さん(13)は、21年生まれの旧陸軍伍長、故・小沢市太郎さんの「3日間の漂流 ラバウル戦体験談」を朗読。小沢さんは42年、陸軍歩兵第二連隊に召集され、中国南部や南太平洋のラバウルに派遣された。43年3月、ニューギニアに向かう途上、米豪軍による爆撃に遭い、海に投げ出されたが生還。ラバウルでは防空壕(ごう)の建設などに従事した。
<ニューギニアに向かう海上でアメリカの攻撃を受け船が沈没し、3日間漂流しました。攻撃の度に海の中に潜り何とかよけましたが、周りの友はふやけて死んでいきました。あなたなら、海に投げ出されて何時間生き延びられますか。それが戦争です>
神田さんは2年前、講話を客席で聞いていたが、今年は演者として参加した。「小沢さんの気持ちを代弁できるよう気を配った。緊張したが来場者に戦争の悲惨さが伝わっていれば」と期待した。
中学生らに朗読を指南したのは、地元で体験談の聞き書きを続ける「こぶけやきの会」の野手利江さん(62)ら。野手さんは「中学生には想像しづらい内容。いかに実感してもらえるかが課題だ。今は使われていない言葉も出てくるため『慰問袋は宅配便のようなもの』などとその都度、説明し、理解してもらえるよう工夫した」と振り返った。
◇特攻、「志願しないなら理由を言え」
講話では、91~102歳の男性3人が戦争体験者として登壇。当時の写真や資料を示しながら体験を語った。
うち、鉾田市の元海軍飛行予科練習生、磯野栄佐(えいすけ)さん(97)は「予科練 特攻」と題して講話。43年10月、土浦海軍航空隊(阿見町)に入隊後、水上機の操縦員として北浦海軍航空隊(潮来市)で訓練を受け、45年5月に第二郡山海軍航空隊(福島県郡山市)に転属。特攻訓練中、終戦を迎えた。
43年4月、県立鉾田中に士官が訪れ、特攻への志願を迫る様子をまずは回想し「(家父長制の時代で)長男を除き、次男、三男が呼ばれた。私は次男だった。『志願しないなら理由を言え』と言われて志願したが親には2~3日言えなかった」と述懐した。
入隊後に直面した過酷な訓練にも言及し、「飛び込み訓練もあったが泳げる人は半分ほど。ほとんどが飛び込み台で震えていたが教官に突き落とされ何人かは溺れて入院した」「上官に殴られ、頭から血を流す人もいた」などと話した。
45年7月に特攻隊に選ばれた際の記憶も鮮明だ。分隊長が兵舎に現れ、磯野さんを含む三十数人にこう厳令したという。「お前たちに2泊3日の休暇を与える。分かるな。他言はするな」。故郷・鉾田に戻り、つかの間、実家で過ごした。帰隊後も出撃命令はなく、郡山で終戦を迎えた。磯野さんは「空襲のむごさ」も目の当たりにしたといい、「今後も語り続ける」などと活動への意欲を語った。
市生涯学習課の本田信之課長補佐は「どう伝えるかが課題。次世代にバトンをつなげたい」としている。【鈴木美穂】
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