「ホームタウン」誤情報拡散 千葉・木更津市がJICAと協議へ

2025/08/26 19:18 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 国際協力機構(JICA)が千葉県木更津市をナイジェリアの「ホームタウン」に認定したことを巡り、交流サイト(SNS)で「移民の受け入れが促進される」といった誤情報が拡散した問題は26日も収束せず、職員は対応に追われた。渡辺芳邦市長は同日の記者会見で「ホームタウン」の名称が誤解を招いたとしてJICAと協議する意向を示した。

 「正しい情報を市ホームページで確認していただけたら幸いです」「ナイジェリア政府機関の発表がこちらの認識と相いれません」

 担当の市企画部では、この日も約15人が誤情報に基づく、抗議電話の対応に追われた。正午ごろ、取材に応じた男性係長は「きょうも20件以上、電話を受けました」と困惑した表情を浮かべた。

 市によると、最も多いのは「木更津市が移民の受け入れを進めていくのか?」という不安の声だ。誤情報を真に受けて「ナイジェリア人が大挙してくれば治安が悪くなるのではないか」「木更津に家を買ったが、引っ越したい」との声も寄せられている。市のホームページを通じて届いたメールは25日だけで700件を超え、26日も電話は鳴りやまない。

 一連の混乱は、アフリカ各国と交流してきた木更津市など4市が、21日に横浜市であったイベントでJICAから「JICAアフリカ・ホームタウン」として認定されたのが発端だ。木更津市は、東京五輪・パラリンピックでナイジェリアのホストタウンとなった経緯があり、今後も同国で、野球・ソフトボールを通じた若者の教育を進める予定だ。

 JICAによると、「ホームタウン」事業は交流強化により、アフリカの諸課題の解決につなげたり、日本の地方を活性化させたりするのが狙いだった。

 だが、アフリカの現地メディアや政府による発信に「移民の受け入れ促進」や「特別な査証の枠組みを創設」など事実に反する内容があり、これらを根拠にSNSで誤った情報が拡散された。市は25日にホームページで「SNS等で報じられている事実はございません」と否定していた。

 渡辺市長は会見で「SNSを含めていろんなことを考えさせられている。正しくない情報が伝わっていきやすい社会、事実確認のない中での発信が続き、それが広がっていろんな影響が出るという風潮はどうなのか」と指摘。「私どもも、しっかりとした情報発信を考えていかないといけないと思う」と述べた。

 「ホームタウン」という名称についても「その言葉でイメージする内容と我々がやっていることは少し違う。その名前がいいのかということも(JICAと)しっかり話をしたい」と述べた。「ホームタウン」という言葉に「移住・移民」を想起させる点があるとみられるからだ。

 一方、ナイジェリアとの関係は「人材教育は市民に心配をかけない形で取り組みたい。発展途上国が大きくなる中で、少しでもお手伝いできれば」と交流は続けるとした。

 一方、県にも25、26日、電話やウェブサイトを通じ計200件弱(午後4時時点)の問い合わせがあり「ホームタウン構想によって、移民が大量に来るのではないか」といった内容が目立つという。

 熊谷俊人知事は25日、自身のX(ツイッター)で、日本とナイジェリア両政府の発信内容に食い違いがあり、不安に思う人がいると認めた上で「当該自治体における在留制度の運用が変わることはありませんし、在留制度が国会審議等なく変更されることもあり得ません」と呼びかけた。【宮田哲、中村聡也】

毎日新聞

社会

社会一覧>