「土と格闘」備前焼作家で人間国宝の伊勢崎淳さん、文化功労者に

2025/10/18 15:00 

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 備前焼作家の伊勢崎淳さん(89)=岡山県備前市伊部=が2025年度の文化功労者に選ばれた。JR伊部駅そばの備前市美術館で記者会見した伊勢崎さんは「人に恵まれ、さまざまな出会いがあったからこそ」。焼き物の手ほどきを受けた備前焼作家の父陽山さん(1961年死去)に対しては「感謝の気持ちでいっぱいです」と話した。

 備前焼のまち、伊部で生まれ、「一度も他の場所で暮らしたことはありません」。10歳くらいのころ、陽山さんの窯焚(た)きの手伝いをするようになり、土をこね始めたという。

 「学校の先生になったらどうか」という父の言葉もあり、岡山大で美術を学んだ。卒業後に弟子入りした陽山さんがほどなく急逝。高校で教えながらの身だったが、「自分には焼き物しかない」という気持ちが募り、思い切った。教員の給料を1年間ためて、現在の住まいとなる土地を購入。自宅裏の窯で焼き始めた。

 自然からヒントを得て土をこねる。自然と風土、歴史の中にテーマを求め、創作を続けてきた。2004年、人間国宝に認定された。「土と格闘しながら仕事を得てきました。これしか私には道がありません。これからできるかどうか分かりませんが、新たな制作に取り組めたら」

 後進に対して、「世界に目を広げ、備前焼の特長を最大限に生かした独特の焼き物を作ることを目指してほしい」とエールを送った。【相原洋】

毎日新聞

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