後発地震注意情報発表のさなか、北海道・東北に津波 住民不安な表情

2025/12/12 21:05 

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 自らの命を自ら守るように呼びかけられた「北海道・三陸沖後発地震注意情報」のさなかに発表された津波注意報。警戒していた沿岸自治体の職員は対応に追われ、避難した住民たちは不安な表情を浮かべた。

 津波注意報が出された12日昼、8日深夜に震度6強を観測した青森県八戸市では、市職員が沿岸地域に避難指示を出すとともに9カ所の避難所を開設した。8日の地震以降、職員が交代で24時間対応できるようにしている。地震で被害を受けた八戸港を熊谷雄一市長が12日に視察する予定だったが、急きょ取りやめた。

 宮城県気仙沼市は避難所を19カ所開設した。担当者は「注意情報の警戒中に起きた地震だったが、通常と変わらない対応をした。(8日の地震と異なり)平日の日中なのですぐに避難所も開設できた」と話した。

 北海道内では31カ所の避難所が開設され、計239人が避難した。注意情報を受け、道は夜間も職員4人が道庁に待機する警戒態勢を取っている。道危機対策課の担当者は「大地震があれば吹雪の中での避難となる可能性がある。寒さから身を守る備えをしてほしい」と呼びかける。北海道函館市では注意情報の後、LINE(ライン)などで地震や津波への備えについて住民向けに発信している。

 一方、北海道新冠町の佐々木正昭さん(62)は高台の避難場所に7人しか避難していないのを目にし、「注意情報が出ているのに緊張感がない。防災無線は家の中まで聞こえにくいから職員らが声をかけて注意を呼びかけるべきだ」と役場の対応に注文を付けた。

 政府は9日未明に北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県182市町村を対象に巨大地震の可能性が平常時より相対的に高まっているとして注意情報を発表。16日午前0時まですぐに逃げられる服装で就寝することや非常持ち出し品を常に携帯しておくように呼びかけている。【松本信太郎、平山公崇、三沢邦彦、後藤佳怜】

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 東日本大震災で被災した経験のある住民たちは14年半前の記憶を呼び起こし、万一の災害に備えていた。

 宮城県石巻市では住民らが市中心部の高台にある日和山公園などに避難した。小雪が舞う寒さで徒歩でやって来る避難者は少なく、付近の駐車場に車を止めて車内でラジオなどから津波の情報に耳を澄ます人たちの姿が見られた。市内の女性(76)は津波注意報の発表後すぐに車で避難。大震災の時は自宅1階に津波が押し寄せたため2階に逃れて2日間孤立したといい、「あの日と同じような雪で落ち着かない。大きな地震がまた来るかもしれず心配だ」と表情を曇らせた。

 宮城県気仙沼市鹿折(ししおり)地区で酒屋を営む菅原文子さん(76)は大震災で夫と義父母を失った。注意情報後、すぐに逃げられるように備えているといい、「あの時のような思いをするのはもうたくさん。師走はもともと忙しいけど、(相次ぐ地震や津波で)いつもより落ち着かない」と話した。

 岩手県大槌町でも8カ所に計172人が徒歩や車で身を寄せた。大震災で自宅を流された倉田敬一さん(67)は高台にある避難所で、「高台に上ることはめったにないが、津波は怖いから」とつぶやいた。【百武信幸、三浦研吾、奥田伸一】

毎日新聞

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