江口寿史さん、“トレパク”疑惑で初見解「一面的なものではない」
人気イラストレーターの江口寿史さん(69)が交流サイト(SNS)上に投稿されていた女性の写真を無断でモデルにして広告のイラストを制作していた問題で、江口さんは30日、自身のX(ツイッター)に、女性や広告の発注元などに対して「深くおわびします」と謝罪するコメントを投稿した。
◇本紙10月取材に「説明お待ちを」
「何を元に描いても『江口寿史の絵』になっていればいいのだという驕(おご)りも生まれていたのかもしれません」などと反省を述べた。
江口さんを巡っては10月、SNSに投稿された女性の写真を本人の許可を得ずにイベント広告用のイラストに利用し、イベントの主催者側は「制作の過程に問題があった」として使用を中止した。
インターネット上では、過去のイラストについても「無断で雑誌の写真などを基に制作したものではないか」などの指摘が相次ぎ、他人の作品や写真をトレース(なぞる)して盗用する意味の造語「トレパク」疑惑が炎上。これまで江口さんにイラストを発注したZoffやクレディセゾンなども掲載を停止し、調査などの対応に追われる騒動に発展していた。
江口さんは今回、問題の発端となったモデルの女性とは、イラスト発表の直後に本人からの指摘を受けて、謝罪した経緯を記し、「弁護士を通じて双方合意の上、和解しております」と改めて説明した。
一方、問題を契機に広がったトレパク疑惑については「トレースは絵を描く上での正当な段階のひとつであり、『トレース=盗用行為すなわち悪』『トレース=すべてトレパク』という一面的なものではありません」などと自身の制作手法に対する思いをつづった。
また、イラストと著作権や肖像権の関係についても説明した。
「弁護士と相談した」とした上で、「ポージングやファッションのルック・スタイリングを参考にするだけでは写真の著作権を侵害することはありません」「イラストを見た人がご本人であることを特定できない場合には肖像権・パブリシティー権といった権利を侵害することもないようです」などとする見解も述べた。
そのうえで、「仮に法的に問題ないとしても、参考にした写真には被写体の方がいて、知らないところで自分に似た絵が描かれたら、不安を感じたり、気分を害されたりする方もいる。そんな当たり前のことにも十分な配慮ができていませんでした」と陳謝した。
「いただいたご意見も真摯(しんし)に受け止め教訓とし、これからも絵を描いていきます」と今後も活動を継続する考えを示した。
問題の発覚当初、江口さんは毎日新聞の取材に対し、「自分の言葉での説明はもちろんするつもりですのでお待ちください」とメールでコメントしていた。
江口氏は1977年に漫画家としてデビュー。週刊少年ジャンプで「すすめ‼パイレーツ」「ストップ‼ひばりくん!」などのヒット漫画を連載後、80年代からイラストレーターとしても活動。現代的な女性を描く作風で支持を集めてきた。【稲垣衆史】
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