高鍋・NO8石川、亡き母へ「花園で年越せたよ」 高校ラグビー

2025/12/30 20:14 

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 ◇全国高校ラグビー大会2回戦(30日・東大阪市花園ラグビー場)

 ◇○高鍋(宮崎)19―7松山聖陵●

 ◇高鍋・NO8石川晄ノ介選手(3年)

 16大会ぶりの3回戦進出を決めると、喜びを分かち合った。高鍋は前回大会2回戦で大分東明と引き分け。抽選で次に進むことができず、負けずして花園を去った。

 「ここを越えるためにみんなでやってきた」と充実感を漂わせ、さらに続けた。「お母さんに花園でプレーする姿と、花園で年を越すのを見せるのが目標でやってきたので」。涙が止まらなくなった。

 2023年に他界した母嘉子さんは「自分をラグビーに導いてくれた恩人」だ。15年のワールドカップ(W杯)イングランド大会で躍動した日本代表・五郎丸歩さんのタックルを見て興味を持つと、高校時代にラグビー部のマネジャーだった嘉子さんが後押ししてくれた。

 23年6月、嘉子さんが白血病であることが判明した。はじめは「少ししたら良くなるだろう」と思っていた。ところが、面会で病院を訪れると、嘉子さんの病状は深刻だった。現実として受け入れられず、病室で「ハグしようか」と言われても断ったこともあった。

 高鍋が第103回大会(23年度)出場を決めた後、嘉子さんからLINE(ライン)が届いた。「今年は病気で花園に行けんけど、来年は家族全員で見に行くからね」という内容だった。しかしその年の12月15日、嘉子さんは容体が急変して息をひきとった。

 直後のことを父晃さん(44)は鮮明に覚えている。「この先どうしたいかと聞くと、『ラグビーを続けたい』と言いました。嘉子もそれを望んでいる。『ラグビーを続けてくれ』と私も頼みました」

 試合前には必ず母のLINEを見て「頑張ってくるね」と天に誓って試合に向かう。

 松山聖陵のFWは大柄で手ごわかったが、60分間体を張り続け、勝利に貢献。「花園でのプレーを見たら『もうちょっと動かんね』って言われると思います」。愛のある「喝」はもう聞けないが、心に残っている。

 大会後、実家の遺影にもう一度報告するつもりだ。「お母さんがおらんくて寂しいことはいっぱいあったけど、頑張っているから心配せんでいいよと言いたいです。やっと花園で年を越せたよ、とも」【林大樹】

毎日新聞

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