「拡散スピードが桁違い」校内の暴行動画が波紋 大人がすべきことは

2026/01/11 09:38 

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 栃木、大分両県の公立学校内で生徒が別の生徒へ一方的に暴行を加える様子を撮影した動画が交流サイト(SNS)で投稿、拡散され、教育委員会や警察だけでなく政府までもが対応に追われる事態となっている。

 動画が動かぬ証拠として「いじめ」の認知に一役買うことがある半面、ネット上での中傷など人権侵害を助長しかねない懸念をはらみ、専門家は動画の拡散の仕方にも変化が見られると指摘する。

 幼少期からスマートフォンやSNSが生活と共にあり「デジタルネーティブ」とも言われる児童・生徒を守るため、大人は何をすべきなのか。

 ◇インフルエンサーが直接拡散

 X(ツイッター)で拡散されたのは栃木県立高校と大分市立中学での動画だ。各教委によると栃木県立高校の動画は4日、大分市立中学の動画は8日に確認された。

 栃木、大分両県警も直ちに事実関係を調べ始め、松本洋平文部科学相は9日、都道府県・政令市の教育委員会を対象に緊急会議を開催すると明らかにした。

 二つの動画は、内部情報などを発信し注目を集める「暴露系」と呼ばれる同一のアカウントから投稿され、広まった。

 「近年の事例は、これまでの拡散スピードとは桁違いの速さだ」。そう警鐘を鳴らすのが、スマホ安全アドバイザーでITジャーナリストの鈴木朋子さんだ。

 「以前はXやユーチューブで少しずつ拡散していくことが多かったが、今は暴露系のインフルエンサーにより投稿され、炎上するケースが増えてきました」

 SNS上で発生する経済的な報酬も拡散する側の動機付けになっているという。

 今回動画を投稿したアカウントは10日午後10時過ぎの時点で23万以上のフォロワーを有し、栃木の動画は1・1億回、大分の動画は5470万回以上再生されている。

 このアカウントは実在する学校名と共に別の動画も投稿。関連アカウントでも学校や職場でのいじめに関する情報提供を募っている。

 ◇撮影=メモ代わり?

 こうした状況の中で、鈴木さんが懸念するのは、当事者がネット上にさらされ、「デジタルタトゥー」として個人情報が半永久的に残ってしまうことによる過度な社会的制裁だ。

 真偽が不明な状態で拡散が進み、関係者の生活に影響を及ぼす可能性もある。栃木県教委は7日に開いた記者会見で学校や生徒への中傷をやめるよう呼びかけた。

 今回のケースでは、暴行の生々しい現場を映すという行為が衝撃を与えたが、鈴木さんは中高生の間では撮影や共有が日常化していると強調する。

 「手元に録音も録画もできるデバイスがある中で育っている世代で、今は写真や動画、(相手とのやり取りが分かる)スクリーンショットもメモ代わりになっています。何か証拠を残そうというほど重い行為ではないのです」

 各教委によると、栃木の動画は関係する生徒同士で共有されていたといい、大分でも居合わせた生徒が学習者用のタブレット端末で撮影し、自身のスマートフォンに転送していた。

 動画がアカウント管理者に届いた経緯は不明だが、鈴木さんは「当事者に近い関係者でなくても、動画を目にしてインフルエンサーに伝える人はいるでしょう。誰かが言えば、すぐに拡散されます」と語る。

 暴行やいじめが悪いことは大前提ではあるが、正義感を盾にした中傷がはびこるネット社会で、大人はどう対応すべきか。

 鈴木さんはSNS事業者の取り組みとして、未成年に対する中傷は表示されないような特段の措置が必要だと指摘する。

 その上で「親が我が子に教える場合は、暴力行為はもちろんいけないが、それを撮ったり拡散したりすることも加害行為につながりかねないと伝えることが大事だ」と話している。【川口峻】

毎日新聞

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