本と季節の便り届け 古里と避難住民つなぐ移動図書館 福島・富岡町
福島県富岡町の町立図書館が、トラックに本を積んで県内各地を巡る「移動図書館」を運行している。浜通りだけでなく、東京電力福島第1原発の事故で避難した町民らが暮らす福島市や郡山市にも通う。「雪が降ったよ」「もう梅が咲いたんだ」。書籍や雑誌と一緒に、古里の便りを運んでいる。
2月10日午後2時半、桜の花をボディーに描いた小型トラックが到着した。大玉村玉井の横堀平団地。原発事故で県内外を転々とし、2016年1月の完成時に入居した町民57世帯101人が住む。
運転手の吉田裕樹さん(62)と司書の大宮慶子さん(42)が、荷台の本棚を車の周りに並べ始めた。椅子と簡易テーブル、ポットに菓子類も。大玉村の前に立ち寄った福島市泉川では、本を借りたり返したりしに来た6人が、お茶を飲みながら町の近況を聞いて談笑したという。
富岡町は原発事故で一時全町民が避難したが、17年4月以降、段階的に避難指示の解除が進められた。富岡町図書館は、18年4月に再開。同8月から、ワゴン車に書籍を積んで町内を走った。だが、町への帰還者は少なく、専用車両を購入した20年から「町民財産を活用してもらうため」遠方にも出向くようになった。
原発事故の発生から間もなく15年を迎える今も、町に住民票を置いている人の約7割は町外で暮らす。
運行コースは六つ。「町内」、大熊町などの「近隣」、2コースがある「いわき市」は毎月1回ずつ。福島市と大玉村の「福島方面」には偶数月、三春町と郡山市富田、大槻地区を巡る「郡山方面」には奇数月に、やはり各1回ずつ回る。
新しく収蔵した書籍や児童書の他に、放送中のNHK大河ドラマに合わせ戦国武将・豊臣秀吉に関するムック本も用意する。中でも野菜栽培や手芸、料理などの実用書が好評といい、昨年4月~今年1月には延べ1146人が、計3463冊を利用した。
役割は本を運ぶことにとどまらない。「巡回して行くと、自宅にこもっていた皆さんが屋外に出てきて会話が始まるんです」と、主任司書の古谷恵美さん(35)は説明する。図書館再開に合わせて東京から町に移住し、「移動図書館」に携わってきた。「コロナ禍は暮らしが一変したねとか、物価高で大変だよねなんて励まし合っています」
古谷さんは去年の暮れ、利用者の一人から「今年も1年間ありがとう」と書いた手紙を渡されたそうだ。「皆さん避難先での生活を少しでも良くしようと頑張っている。そんな中で『桜は咲いたか』なんて聞かれることも」。移動図書館は、離れて暮らす町民と古里とを心の中でつなぐ手段の一つなのかもしれないと感じている。
結局この日、大玉村の団地での利用者は皆無だった。いつもより20分ほど長く50分間も粘ったが、大宮さんが再会を楽しみにしていた母親と小学生の親子も現れない。
「どこか体調が良くないかも」と気をもむ大宮さんに、移動図書館運転手歴6年の吉田さんが、声を掛けた。「ま、こんな日もあるさ」。定期的に巡って来る、その安心感が重要なんだという。
片付けを黙々と終え2人は、町まで約2時間の帰路に就いた。眼前の安達太良山から冷たい風が吹き降りる。振り返ると、阿武隈高原の山々。富岡町は、その向こうにある。【根本太一】
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