SNS動画きっかけで「奈良のシカ」巡るクレーム急増 県職員は疲弊
「奈良のシカ」に関する奈良県の担当課へのクレーム電話が急増し、職員が疲弊している。暴言や長電話などで職員はストレスを抱え、業務に支障も出ている。職員の精神的ダメージにもつながることから、県はナビダイヤルの効果的な活用も始めた。立場が弱い自治体職員に対するこうした行為は全国で増えており、専門家は「カスタマーハラスメントに該当する」と指摘。10月には法改正で企業や自治体のカスハラ対策が義務化される方針だ。
「なぜシカへの暴力を見て見ぬふりするのか」「シカさんに暴力を振るう(特定の国の)外国人を捕まえろ」「(同)外国人を奈良公園に入れるな」
電話は全国各地の人から入り、理不尽な要求を突きつける。何度も同じ内容を繰り返すケースもある。職員の回答が意に反した場合は「なぜ要望を聞けないんだ」などと興奮してののしったり、「ばか野郎」などと強い口調で怒鳴ったりする人も。多い日には1人が累計で約3時間、電話対応に費やすこともあった。
クレームの電話が増えたのは2024年。「外国人がシカをいじめている」という内容のSNS(交流サイト)の動画がきっかけだった。最近は比較的落ち着いているものの、完全になくなってはいない。
「公僕」を強く意識し、高圧的な態度を取るケースも。公務員という立場上、電話を切れないこともある。こうしたやり取りを何度も繰り返すことが精神的ストレスになり、モチベーションが奪われて業務に集中できなくなる職員もいる。
国の天然記念物である「奈良のシカ」は野生動物であり、飼育動物ではない。野生のシカを春日大社の「神の使い」と考え、人々が大切にしてきたことで1000年以上、市街地で共生する珍しい光景が成り立っている。
こうした歴史を知らず、外国人がシカに不用意に近づいてトラブルになる一部の動画を見ることで、虐待が日常的に起きていると誤解し、“正義感”で電話を入れる人もいるという。「貴重なご意見はありがたいが、奈良のシカを心配してもらえるなら、奈良公園の歴史や文化にも認識を深めてもらいたい」(担当者)。
こうしたクレーム行為について、奈良大の太田仁教授(社会心理学=対人援助分野)は「PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しかねない危機的な状況。職員が体調を崩さないか心配」と思いやる。
総務省が24年11~12月、地方自治体の一般職職員を対象に実施したハラスメントに関する調査では回答者の35%が「カスハラを受けたことがある」と回答。民間企業の従業員を対象とする厚生労働省の調査結果に比べ、約3倍に上っており、立場が弱くなりがちな自治体職員への理不尽な攻撃が多い状況がみえる。
一方、公務員の中には「こんなこともできないのか」と周囲に思われるのを気にして「自分で何とかしなければならない」という意識を持つ人も多く、個人でクレームに対応しているケースも目立つという。その結果、電話の後に「燃え尽き症候群」のように意欲をそがれ、職場で孤立も感じ、辞職してしまう事例もある。
太田教授は対策として「電話が長時間になれば切る、または担当を交代するなど部署の中で対応をルール化するのが効果的。個人に抱え込ませず、チームで対処する態勢が重要」と説く。県の担当部署でも昨年12月から各担当部署の電話番号を「0570」から始まるナビダイヤルに変更。自動音声の案内中に電話を切る人もいて、一定の効果につながっているという。
職員らのストレスが増す中で厚生労働省は今年10月、自治体や企業にカスハラ対策を義務付ける改正労働施策総合推進法を施行する方針だ。対処例として「十分説明しても要求が続く場合は電話を切ることができる」なども挙げている。法改正により、自治体や企業は職員らの心身の健康や安全を確保し、安心して働くことができる職場環境を整備することなどを求められる。県は08年に不当要求行為への対応マニュアルを整備済みで、職員への更なる周知を徹底するという。【山口起儀】
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