大川原化工機関係者「経済事件で逮捕不要」 人質司法の解消訴え
罪を認めなければ簡単に保釈されない「人質司法」の解消を目指し、冤罪(えんざい)の経験者らが集う「人質司法サバイバー国会」が26日、参院議員会館で開かれた。警視庁公安部に不正輸出のぬれぎぬを着せられた化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の関係者が出席して事件を振り返り、「人質司法の問題から目をそらさないでほしい」と訴えた。
大川原正明社長(76)と元取締役の島田順司さん(72)は無実の罪で332日間、勾留された。
大川原社長は、逮捕・起訴後も約90人の社員が一人も辞めなかったことに触れ、「我々は不幸にもターゲットにされてしまったが、社員と社員の家族が信じてついてきてくれた。改めて感謝したい」と話した。そして、有罪でも執行猶予が付くような経済事件などはそもそも身柄拘束をすべきでないとし、「逮捕・勾留の必要は全くない。やめてもらいたい」と語った。
冤罪であることが明るみに出る前、警察内では大川原化工機を立件したことが高く評価され、捜査推進派の警察官らは軒並み昇進した。警視庁の捜査を違法とする司法判断が確定した後も、誰も降格していない。
島田さんは「この実態がある限り、再発を危惧している」と危機感を募らせた。「冤罪ではなく、公安部による捏造(ねつぞう)事件だ」とも述べ、任意の段階から取り調べを録音すべきだと訴えた。
勾留中にがんが見つかり、被告の立場のまま亡くなった元顧問の相嶋静夫さん(享年72)の長男(52)は、裁判官の責任に言及した。「裁判官が逮捕、勾留の決定を下したからこそ、身体拘束が始まった。裁判所は一人の命が失われても、謝罪も検証もなく沈黙を続けている」と批判した。
相嶋さんの保釈を認めなかった裁判官らの責任を追及する訴訟を4月上旬に起こすことに触れ、「この国の司法を本来あるべき姿に取り戻すために力を貸してほしい」と呼びかけた。
人質司法サバイバー国会は2023年に始まり、今回で3回目。与野党の国会議員14人を含む約160人が参加した。【遠藤浩二】
◇「人質司法報道賞」に毎日新聞記者
人質司法サバイバー国会では今年新設された「人質司法報道賞」の受賞者が発表され、「追跡 公安捜査」で大川原化工機事件の取材を続けている毎日新聞社会部東京グループの遠藤浩二専門記者が選ばれた。「これまで知られてこなかった重大な事実を明らかにし、当事者に真摯(しんし)に寄り添い、尊厳の回復も重視した。日本の冤罪史において極めて貴重な調査報道」と評価された。
この賞は、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」と冤罪被害者支援団体「イノセンス・プロジェクト・ジャパン」の共同プロジェクト「ひとごとじゃないよ!人質司法」が設けたもの。
遠藤記者は授賞式で「人質司法を『人ごと』ではなく、『自分ごと』として考えられる報道を続けたい」と話した。
NHKスペシャル「冤罪の深層」を手がけたNHKの石原大史チーフディレクターも受賞した。
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