32校で「大谷ルール」採用わずか1校、背景に「縛り」 センバツ

2026/03/27 07:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 春夏の甲子園大会で初めて指名打者(DH)制が導入された第98回選抜高校野球大会は、27日に準々決勝4試合がある。

 出場校がさまざまな方法でDHを戦略に取り入れる中、先発投手とDHを兼ねることができる通称「大谷ルール」を採用したのはわずか1チームにとどまる。

 投打「二刀流」で活躍する選手が多い高校野球で広がりを欠くのは、ある「縛り」が影響している。

 ◇「最後まで自分が…」

 14年ぶりにベスト8入りした八戸学院光星(青森)が、出場32校のうち2回戦までの24試合で唯一、「大谷ルール」を使用した。

 1回戦で187センチの長身右腕・北口晃大(あきひろ)選手(3年)を「4番・投手兼DH」で起用。北口選手は抜てきに応え、10回6失点(自責点3)で完投し、打者としては2安打3打点を記録した。

 2回戦では「4番・DH」で出場し、五回からDHを解除して救援登板するなどDH制を活用している。仲井宗基監督は「ここ一番で勝負強い打撃をするし、あの体で打席に立たれると怖いと思う」と投打に期待を寄せる。

 一方、北口選手は「大谷ルール」で出場した1回戦はある思いを胸にマウンドに立っていたという。

 「一回下がったらもうマウンドに上がれないので、もう何球になっても、最後まで絶対自分が投げようと思って腕を振りました」

 ◇「大谷ルール」の注意点

 これが各校が「大谷ルール」の使用を避けた大きな理由になっている。

 大谷翔平選手(米ドジャース)の登場によって誕生した「大谷ルール」は、先発投手と打者を別々の2人として考える。「大谷ルール」を使う場合、チームは試合前に提出する打順表に10人の選手の名を並べ、先発投手とDHの欄に同じ名前を記載する。

 野球のルールを定めた公認野球規則にはこう記されている。

 「投手を退いたとしても、指名打者としては出場し続けることはできるが、再び投手として出場することはできない」

 「投手兼DH」で先発した選手が途中で降板した場合、DHとしては出場を続けられる。DHを解除すれば他の守備位置に就くこともできる。しかし、一度マウンドを降りると再登板することはできないと定めており、この点がネックになっている。

 ◇「4番・投手」を選択

 大垣日大(岐阜)は背番号「1」の竹岡大貴選手(3年)が投打の柱。「4番・投手」で出場した1回戦では打者としては1安打を放ち、投手としては188球を投げ、延長10回を1失点で完投した。2回戦では登板せずに「4番・DH」で出場した。

 「大谷ルール」を選択しなかったことについて、高橋正明監督は「早めの継投も考えているので、再登板ができない大谷ルールだと迷いが生じる。縛りがあるのでトーナメントの一発勝負だと交代のタイミングが難しい」と打ち明ける。

 投打にハイレベルな最速146キロ右腕の木下瑛二選手(3年)を擁した高川学園(山口)もDHを使わず、「4番・投手」を選んだ。

 松本祐一郎監督は「2番手投手が捕まれば『もう一回エース』というのは高校野球では珍しい話ではない。その作戦が使えない以上、このチームには必要ないかな」と語る。

 2021年の米大リーグのオールスターで、大谷選手が降板後もDHで出場を続けるために設けられた特別ルールが広がり、野球界に定着した。

 高校野球ではエースと力が同等の投手がベンチにいて、再登板を考えなくてよいならば、降板後もDHとして試合に残る「投手兼DH」は有効な手段になり得る。

 しかし、エースが絶対的な存在であるほど、コールドゲームが採用されていない甲子園大会では「大谷ルール」の選択はリスクを伴うことになりかねない。

 このリスクに「大谷ルール」を唯一、取り入れた八戸学院光星の仲井監督は「退路を断つ」と表現する。「北口が投げた時はアクシデントがない限り、基本完投ということを決めていた。再登板すると負担も大きいし、今まで練習試合などでやってきて、いいためしがなかった」と説明する。

 「大谷ルール」を使いこなすチームは現れるのか――。【長宗拓弥、荻野公一、吉川雄飛】

毎日新聞

スポーツ

スポーツ一覧>