埼玉・八潮の陥没道路、完全復旧遠く 県道再開も住民補償に課題
埼玉県八潮市で2025年1月に起きた下水道管破損による道路陥没事故で、発生現場で通行止めとなっていた県道が15日、1年3カ月ぶりに再開された。片側1車線での暫定開通だが、付近の住民からは歓迎する声が聞かれた。ただ、完全復旧には時間を要する見込み。周辺住民に対する補償も課題を残しており、前例のない大規模陥没事故の影響は今後も続く。【増田博樹】
15日午前10時、作業員が通行止めのゲートを撤去すると、トラックや乗用車が続々と再開した道路を通過していった。現場では長期にわたって悪臭や騒音が発生していた。以前からは改善したものの、この日も時折臭気が漂っていた。
通行再開の様子を見ていた市内の男性(78)は「これで日常が少し戻ると思う」と安堵(あんど)の表情を見せた。同市で動物や菓子型などの消しゴムを製造する「イワコー」の岩沢努社長は、「内職の方への配達が迂回(うかい)や渋滞で時間がかかり、従業員の負担になっていた。再開で余計な残業をしないで済む」と歓迎する。
通行が再開したのは交差点を東西方向に走る県道54号線の600メートル区間。破損した下水道管が26年2月に復旧したことを受け、陥没穴の上に長さ約20メートルの仮の橋をかけ通行できるようにした。ただ、仮設橋の下や道路北側には巨大な穴が残り、今後も雨水管やガス管などの復旧工事が「年単位で続く」(県担当者)。交差点の全面再開のめどはたっておらず、完全復旧までには少なくとも5年はかかる見通し。
住民も手放しで喜んでいるわけではない。
現場から約70メートルの場所に住む主婦の木下史江さん(56)は、「穴は残っており元の生活に戻るわけではない。工事が続くため、今後どのような生活環境になるのか分からない」。岩沢社長も「(下水管の老朽化で)また陥没があるのではという不安はある。『日本中でありえることで仕方がない』と思うようにしている」と話す。
事故を受け、県は現場周辺の約500世帯・事業所を主な対象に補償の検討を進めている。ただ、そのうち「経験がない対処をしたことによる補償」(その他補償)を巡り、住民側からは「世帯間の被害の差が反映されていない」「事業所の補償額が少ない」などの批判が出ている。
昨年末に住民団体を発足させた木下さんは、硫化水素の影響とみられるサビで変色した金属部品を県が補償対象にしたことについて「大変ありがたい」と評価する。一方で、「『その他補償』は進展がなく、住民の現状に寄り添った内容にしてもらえるよう今後も声を届けたい。暫定開通は一歩前進だが、まだ課題は残っている」と指摘している。
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