民泊、被災者に無償提供 熊本県内の施設を「自宅のように」

2026/09/23 13:30 

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 7月の熊本地震で自宅が全壊するなどした被災者向けに、民泊事業者の団体が、熊本県内にある民泊施設の一部を無償で滞在できる場として提供している。家具や家電をはじめ居住環境が整い、妊婦など要配慮者のいる家族が気兼ねなく利用。慣れない避難生活の中でも「自宅のように過ごせて安心」と喜ばれている。

 ◇全壊判定の自宅で

 「今までの日常に近い生活ができ、本当にありがたかった」。こう話したのは、熊本県甲佐町から熊本市内の民泊に家族4人で約1カ月間身を寄せた田上和美さん(53)だ。

 7月28日の地震で、甲佐町の自宅は基礎から壊れ、「よく建っているな」と思うほどに傾いた。室内にあった約300キロのピアノの重みで床も陥没。後に全壊判定を受けた。

 10年前の地震の時は、しばらく車中泊をして乗り切った。だが、今回は田上さんの娘が出産を控え、母体に負担がかかることは避けたかった。一般の避難所に行くことも検討したが、自宅なら「水や食べ物もあり、娘の健康を考えた食事を作れる」とも考え、建物に怖さを覚えながら、しばらくとどまる選択をした。

 県が調整するホテルへの避難も申請したが、連絡はなかなか来なかった。そんな時に友人から民泊を避難施設として活用する「やどかりプロジェクト」を紹介された。8月8日にウェブサイトから申し込むと、その日のうちに担当者から返信が来た。

 希望地域や妊婦がいる事情などを伝えると調整が進み、申し込みの2日後、利用が始まった。アパートにあった民泊は2DKの間取りで、家電はもちろん鍋など調理器具も用意され、風呂もキッチンも自由に使える。「自宅から持ち出せる家具は限られているが、ここに来れば(備品が)全てそろっていた」

 民泊で落ち着いた時間を過ごした田上さんの娘は、9月上旬に男児を無事出産した。

 ◇能登半島地震では300人が利用

 乳幼児2人を含め4人の子どもを育てる熊本県宇土市の30代の夫婦も、熊本市内の民泊を一時利用した。被災直後に過ごしていた避難所は乳児のミルクを作るだけでも苦労し、子どもが走り回らないよう、目を離すこともできなかった。民泊はそんな心配がなく「すごく助かった」と振り返る。

 熊本のプロジェクトは一般社団法人民泊観光協会(JAMTA)石川支部代表の河西紀明さんが考案し、地震発生の1週間後から提供を始めた。自身は普段、石川県内で民泊施設を運営。父が元公務員で、災害対応を担当する姿を間近にみる中で「民泊を災害時に利用できないか」とアイデアを温めてきた。

 2024年の能登半島地震の時には、発生翌日から支援を展開。避難所での生活に配慮が必要となる要介護者や乳幼児を持つ家族の受け皿となり、約300人が利用した。

 熊本県内では現在、熊本市、大津町など5市町村の10施設で利用希望者を受け入れている。プロジェクトは12月末までで、滞在期間の上限は1カ月。JAMTA熊本支部代表の吉川香寿美さんは「ぜひプロジェクトを知ってもらい、利用してほしい」と話している。プロジェクトのサイト(https://yadokari-project.studio.site/)【井手一樹】

毎日新聞

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