「気を抜いたら…」 桐蔭学園主将が仲間にかけた言葉 高校ラグビー
◇全国高校ラグビー大会決勝(7日・東大阪市花園ラグビー場)
◇○桐蔭学園40-17東海大大阪仰星●
12点をリードした後半4分。桐蔭学園はゴール前で反則をとられ、相手の司令塔、吉田琉生(るい)にクイックスタートからトライを許した。差を5点に縮められた。
ここで仲間を集め、強い言葉をかけたのが主将のフランカー申驥世(しん・きせ)だ。
「これが仰星だよ。気を抜いたらこうなるよ」。東海大大阪仰星の反撃に会場がざわつき始めたが、申にとっては想定内だった。「(相手の地元で)99%アウェーになると考えていた」
この言葉が効いたか。わずか5分後。桐蔭学園は相手陣でラインアウトを形成すると、モールで約30メートル押し込んでFWでトライを奪った。選手には試合の流れを渡さないと言わんばかりの気迫がにじみでていた。
申にとって桐蔭学園への進学には強い思いがあった。2022年2月、当時、東京朝鮮中3年だった申は家族会議で進学先を話し合った。父は東京朝鮮高ラグビー部のコーチで、そのまま高校に進み、父とともに花園を目指す流れだったが、別の道を選択した。
幼い頃に花園で見た桐蔭学園の選手に憧れた。体が屈強な関西や九州の選手らに果敢に立ち向かい、勝利する姿が自身の体と重なって見えた。「やり方次第で自分も頂点を目指せる」と桐蔭学園に進むことを直訴。「絶対に日本一を取る、花園で優勝する」と家族に約束した。
前回大会の優勝後に新チームの主将になると、伝統校の重責に押しつぶされそうになり、自問自答を繰り返した。大事にしたのが仲間との話し合いだ。
昨秋の県予選前には腰のけがで一時的に練習を外れると「勝てるチーム作り」を再考した。選手間のミーティングが2時間を超えることは珍しくない。「身近な仲間の考えがわかったことで、チームとして前に進めた感じがあった」。連覇に向けて一つになった。
藤原秀之監督(56)は「一人で体を張って元気づけて鼓舞し、あんなに最高な男はいないでしょうね」と絶賛する。
優勝が決まると両手を突き上げて喜び、応援席の仲間に笑顔で優勝を報告した。「うれしさよりもホッとしました。『良かった』って。個人的には桐蔭学園に来て良かったとも思いました」。連覇の偉業達成に浸った。【林大樹】
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