大けがも、自ら選んだ道で日本一 桐蔭学園・松本桂太 高校ラグビー
第104回全国高校ラグビー大会は、桐蔭学園(神奈川)の2大会連続5回目の優勝で幕を閉じた。CTB松本桂太選手(3年)は小学生の頃、ラグビーの試合中の大けがで生死をさまよった。それでもラグビーを続け、決勝の大一番で最高のプレーを見せた。
ラグビーを始めたのは小学2年の時。知り合いだった桐蔭学園出身の栗原由太選手(現・リコーブラックラムズ東京)が、藤沢ラグビースクール(神奈川県藤沢市)に通っていたのが縁で同スクールに入った。すぐにのめり込み、めきめき技術も上達したという。
2017年10月、小学5年だった松本選手は神奈川県内であった大会に出場していた。試合中、相手2人から腹部に強烈なタックルを受け、出場は続けたものの、帰宅後も気分は優れなかった。「何かおかしい」と、母真喜子さん(53)は病院に連れて行った。
肝臓と脾臓(ひぞう)が破裂していたことが判明。医師からは「朝まで病院に来ていなかったら危なかった」と告げられた。集中治療室(ICU)で治療を受け、10日間ほどは点滴だけで過ごし、約1カ月間入院した。
ラグビーを再開できたのは小学6年になってから。当時は水泳も習っており、「親としてはけがの不安の少ない競泳を続けてほしかった」と真喜子さん。しかし、「次に何が起こるのか予測できず、友達と力を合わせてプレーするのもいい」と、息子が選んだのはラグビーだった。
憧れたのは、ラグビーを始めるきっかけとなった栗原選手だ。中学3年の時、すでにプロだった栗原選手から「日本一になりたいなら、日本一の練習が必要」と、桐蔭学園ラグビー部への入部を勧められた。
藤沢市にある自宅から約1時間半かけて通学したが、全国屈指の強豪校の練習は厳しかった。だが、「日本一になる」という目標を諦めず、楕円(だえん)のボールを追い続けた。昨年の花園優勝後、新チームでレギュラーをつかむと、得意のタックルを武器に今大会の快進撃を支えた。
決勝は第95回大会決勝と同一カード。相手の東海大大阪仰星(大阪第2)は、憧れの栗原選手が桐蔭学園の選手として出場し、敗れたチームだ。
松本選手は5日の準決勝は足のけがで欠場したが、決勝は先発。スタンドで見守る真喜子さんの前で、先制のトライを決めるなど、けがの影響も見せず攻守の要として躍動した。
試合後、けがでラグビーをやめようとは思わなかったのかと問うと、「花園のような大きな舞台に立ちたいからこそ、これまでラグビーを続けてきた。最高の舞台でチームに貢献できたのがうれしい」。【矢野大輝】
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