満票ならず「すごく良かった」 イチローさんが会見で語った人生観

2025/01/22 18:44 

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 米大リーグ通算3089安打を放ち、日本人選手で初の米国野球殿堂入りしたイチローさん(51)は21日(日本時間22日)に記者会見した。快挙を成し遂げた一方、史上2人目の満票選出はならなかったが、これについては「すごく良かった」と意外な答えで応じた。

 今年の殿堂入りの発表中継でイチローさんは、「この日を迎えることは2001年にMLB(大リーグ)に挑戦した年には誰も想像できなかったと思う。言葉で言い表せない気持ちです」と素直に喜びを語った。その後は長くプレーしたマリナーズの本拠地シアトルで記者会見を行った。

 16日の日本の殿堂入りでは349票中、得票は323で満票に届かなかったことで議論を呼んだ。米国でも394票中393票で、ヤンキース時代に同僚だったデレク・ジーターさんが殿堂入りした際と同じく、満票に1票届かなかった。

 だが、イチローさんは残念がる様子もなく、「自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生」と自らの人生観を披露。その上で「不完全であるというのはいいなあって。だから進もうとできるわけで。そういうことを改めて考えさせられるというか、向き合えるというのは良かったな」と全てを前向きにとらえた。

 イチローさんは数々の好プレーを生み出してきた。一番達成感があったことは、まず引退前年の18年5月から選手としてプレーできなくなった時間を挙げ、「10月まで『練習だけ』を過ごした。次の年を信じて。この時間はなかなか経験できない。あるプレー、ある記録より、この経験が僕の支えになっている」。続いて19年3月の東京ドームでの引退にも触れ、「僕は引退をお知らせしていなかったにもかかわらず、試合が終わって何時間たっても、お客さんが球場にとどまって僕を待っていてくれた。僕の支え」と振り返った。

 MLBデビューから四半世紀がたつ。現役生活は「初めての(日本人)野手としての覚悟を持ってプレーした」と言う。大谷翔平選手の大活躍もあるが、後進にはまだ不満を感じており、「25年後に『こんなに少ないのか』という感触。あまりにも進み方が遅い」と“愛のむち”も口にした。

 引退した今もマリナーズで現役選手とともにトレーニングに取り組む。「どこにゴールがあるかは分からないです。今やっていることは、その日の限界を迎えること。これを繰り返すことで、アスリートの体がどうなっていくのか興味が強い。単なる一例だけど、野球選手にヒントになると思い、取り組んでいます」。レジェンドの終着点は、引退も殿堂も超えたはるか先にある。【岸本悠】

毎日新聞

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