タイブレークは先攻有利? 低反発バットの影響は… 夏の甲子園
延長戦は先攻が有利?
5日開幕の第107回全国高校野球選手権大会で、49代表校を決める地方大会決勝では11試合が延長タイブレークにもつれ込んだ。
興味深いのが、先攻のチームが7勝し、勝率が6割を超えていること。「相手の点数を見て攻撃を考えられる」などの理由で後攻有利との声もあるが、これは偶然なのか。それとも必然なのか。代表校の監督や選手らに聞いた。
◇2試合連続「先攻で」…
先攻チームの勝利で象徴的だったのは、大阪大会決勝だ。
甲子園春夏通算9回の優勝を誇る大阪桐蔭と14年ぶり2回目の甲子園出場を狙う東大阪大柏原が顔を合わせた。
4―4の同点のまま、無死一、二塁から始まるタイブレークに突入した。
延長十回表、東大阪大柏原は1死二、三塁から値千金の適時二塁打が飛び出し、2点を勝ち越した。
追い込まれた大阪桐蔭は手堅く犠打を選択して1死二、三塁に。犠飛で1点を返したが、後が続かなかった。
東大阪大柏原は先攻だった準決勝でも延長タイブレークを制していた。主将の竹本歩夢選手(3年)は「守備には自信があるので、取れるだけ点数を取ったらあとは守るだけだった」と勢いづき、全国屈指の強豪に競り勝った。
◇先に取られると「ストレス」
タイブレーク制度は選手の負担軽減のため、甲子園大会では2018年のセンバツから導入された。
当時は延長十三回からだったが、23年センバツからは延長十回からに早まった。そのため、最近はタイブレークで勝敗が決する試合が増えている。
得点が入りやすいだけに、勝ち越せば相手にプレッシャーを与えられる。
後攻チームを体験した監督は、うなずく。
昨夏の甲子園で延長タイブレークの末に敗れた智弁和歌山の中谷仁監督は「先攻は『とにかく点を取るぞ』と、プレッシャーなくいける。ただ、後攻は(点を取られると)追い込まれたという精神的なストレスがかかる」と振り返る。
地方大会決勝でも、その傾向が顕著だった。
延長戦の表で得点を挙げた9チームのうち、逃げ切ったのが7チームに上った。
◇低反発バットの前と後
なぜ、今になって先攻が有利という見方が出てくるのか。
24年春から導入された低反発の金属バットの影響も少なからずあるだろう。
24年春のセンバツは安打数、本塁打数とも激減し、24年夏の甲子園も同様だった。
導入されて一定期間が経過したことで選手の対応力は確実に上がり、25年春のセンバツでは安打数が「低反発以前」と同水準に戻った。
しかし、局面を打開できる長打は「低反発以前」ほどは期待しにくい。
25年春のセンバツで本塁打数は24年大会から倍増して6本を数えたものの、32校以上出場が定着した1983年以降では、3番目に少ない数字だった。
しっかりと芯で捉えなければ鋭い打球とならない新基準のバット。追い込まれた終盤では重圧と闘いながら、高い技術力が求められる。後攻チームが乗り越えなければいけないハードルは高い。
「低反発以前」の時代に延長タイブレークに突入したのは甲子園大会で計16試合あり、後攻チームの11勝5敗だった。新基準に変更になってからは計13試合で先攻が7勝6敗で逆転している。
昨夏の地方大会決勝では5試合がタイブレークで決着し、先攻2勝、後攻3勝と拮抗(きっこう)していた。
◇後攻有利の考えも
夏の甲子園大会は前回大会までで3641試合があり、先攻1742勝、後攻1891勝(引き分け8試合)で、後攻の勝率が5割2分1厘となっている。延長戦も先攻163勝、後攻180勝(引き分け6試合)と同様の傾向がある。
「野球は守りから」という定説があるように、後攻を有利とみる考えも根強い。
広陵(広島)を率い、甲子園で春夏通算40勝を誇る中井哲之監督も、その一人。
「(先攻チームに)点を取られた分、戦い方が(はっきり)分かる。1点勝負になることを考えると裏(後攻)の方がいいのかなと思ったりもします」と説明する。
千葉大会決勝では延長十回表に八千代松陰に4点を奪われた市船橋が、その裏に5点を取ってひっくり返した。
相手投手の乱調につけこみながら強攻策を貫いた市船橋の海上雄大監督に、先攻・後攻の妙について質問をすると、思案顔でこう言った。
「(表と裏で)戦略は違うが、どっちもどっち。先に表で点を取れたら、やっぱりディフェンスは楽ですが、でも取れなかった時の難しさもあります……」
どちらが有利かという論争は続くことになりそうだが、手に汗握る延長戦では「タイブレーク」という名の通り、均衡を破るための一手に注目したい。【村上正、深野麟之介、吉川雄飛、石川裕士】
◇延長タイブレークを実施した2025年の地方大会決勝
※延長十回からタイブレーク
◇秋田
鹿角
0000000010◆1
0000010001◆2
金足農
(延長十回)
◇茨城
明秀日立
2000000002◆4
1010000001◆3
藤代
(延長十回)
◇栃木
青藍泰斗
0100000102◆4
0002000001◆3
作新学院
(延長十回)
◇群馬
前橋育英
00300000000◆3
00300000001◆4
健大高崎
(延長十一回)
◇千葉
八千代松陰
1010010004◆7
0000201005◆8
市船橋
(延長十回)
◇愛知
豊橋中央
00201000003◆6
10000000202◆5
東邦
(延長十一回)
◇石川
小松大谷
1110000122◆8
3210000001◆7
金沢
(延長十回)
◇大阪
東大阪大柏原
0200020002◆6
0000004001◆5
大阪桐蔭
(延長十回)
◇広島
広陵 0000000011◆2
崇徳 0000001000◆1
(延長十回)
◇愛媛
松山商
0000010002◆3
0100000003◆4
済美
(延長十回)
◇長崎
創成館
11100000001◆4
00000100200◆3
九州文化学園
(延長十一回)
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