「下級生から主将」は新トレンド? 横浜に青藍、聖愛も 夏の甲子園
開催中の全国高校野球選手権大会には、1、2年生のうちから主将に任命され、チームをまとめてきた選手がいる。先輩がいる中でなぜ大役を任されたのか、重圧はなかったのか。そして、チームにはどのような効果が表れたのか。
大半のチームは夏の大会後に「代替わり」をする。
今春の選抜大会を制した横浜(神奈川)の阿部葉太選手(3年)が村田浩明監督から主将に任命されたのは、2年の春だった。
村田監督は「1、2年生が試合に出てはいけない決まりがないのと同じで、(2年生主将は)イレギュラーではなかった」と語る。
阿部選手は1年夏から公式戦に出てきた実力者だが、「当初は3年生に強く言ってよいのかも分からなかった」と困惑もあった。異例のタイミングだったことは間違いない。
狙いは何か。
村田監督は「練習でも仲間への指示でも、甲子園に行きたいという思いの強さが抜けていた。適材適所という意味で、学年は関係なかった」と語る。
それまで主将を務めていた1学年上の椎木(しいぎ)卿五(けいご)選手(立正大)からは「俺もいるから、一緒になって戦ってくれ」と声を掛けられたという。
阿部選手は「それから『自分がやらないといけない』とより強く思うようになった。『阿部についていけば大丈夫』と言われるように、先頭に立って何事もやるようにしてきたつもり」と振り返る。
チームは昨秋の明治神宮大会、今春の選抜を制し、今夏は優勝候補の筆頭格として3年ぶりに夏の甲子園大会に帰ってきた。
阿部選手は「前の代から苦しいこともうれしいことも経験させてもらって、スムーズに新チームに入れた」と、長くチームをまとめたメリットを挙げる。
村田監督も「(早くから主将を任せたのは)良いことしかない。自分(監督)がその気でも選手がその気でなければ優勝はできないし、阿部には大変な思いをさせてしまったが、彼が主将になって野球部を変えてくれた」と称賛する。
35年ぶりの甲子園出場を果たした青藍泰斗(栃木)の佐川秀真(しゅうま)選手(3年)は、1年秋から主将を務めてきた。
青山尚緯(なおい)監督が部長から監督に就任した2023年秋に抜てきされた。
佐川選手は「自分の結果も出さなければいけなくてプレッシャーがあったが、チームのことを誰よりも見ることが大事。プレーや寮生活の部分でも悪い方向に流されそうな人がいたら引っ張るなどした」といい、「人間的な成長が一番大きかった」ととらえる。
青山監督は中学時代から佐川選手を見ていて責任感の強さを感じていたといい、「彼は試合で誰よりも早く守備位置についてグラウンドをならしていた。いずれはチームを引っ張ってほしいと思っていた」と話す。
主将になる時期は「早いか遅いかだけの違い」として、「私たち(指導者)の意図をくみ取ってくれている時間が長い分、指導者と選手の意思疎通がうまくできた」と語った。
弘前学院聖愛(青森)は三塁コーチャーの田崎光太郎選手(2年)が今年6月から主将を担ってきた。今大会は1回戦で西日本短大付(福岡)に延長十回タイブレークの末に敗れたが、その目に涙はなかった。
「最後までやり切ろうという気持ちがあったので、涙が出そうになったがぐっとこらえた」と話し、涙を流す先輩たちを励ました。
田崎選手は1年春から二塁のレギュラーをつかみ、プレーでも上級生を引っ張ってきた。原田一範監督は「物おじせず、ピンチでも楽しんでプレーできるので、たいしたもんだと思っていた。上級生にもガンガンものを言えるし、(田崎選手が)キャプテンでいいんじゃないかと考えていた」という。
そうした中で今年3月、田崎選手は右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂し、復帰まで約1年を要するとの診断を受けた。その3カ月後、原田監督は主将交代を決断した。
春の青森大会は3位決定戦で敗れ、当時の主将で攻守の軸だった「3番・遊撃」の丸岡侑太郎選手(3年)が調子を落とす中、チーム作りを見直した。
原田監督は「(田崎選手が大けがで)気落ちしていたのでこんな状態で主将はさせられないと思っていたが、春に負けたので思い切って『チームを作る田崎』『ゲームを作る丸岡』と役割分担しようと思った」という。
田崎選手はプレー以外でチームを鼓舞するため、リーダーシップのあり方を試行錯誤してきた。甲子園大会では伝令役を務め、ピンチの場面で仲間と肩を組んで指示を伝えた。
田崎選手は「医師からは『6割でなら走っていいよ』と言われていたが、伝令では9割で走ってしまった。次は自分があの場所に立って、プレーでもどんどん引っ張っていけるようにこの経験を生かしていきたい」と語った。【吉川雄飛】
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