<eye>80年後も終わらない戦争
今も残る戦争の爪痕に向き合っている人々がいる――。
今年3月25日午前、沖縄県南部の南城市の小学校脇にある工事現場で、陸上自衛隊第101不発弾処理隊の隊員たちが、不発弾に対処していた。
不発弾は、沖縄戦時の米軍の5インチ艦砲弾で、起爆装置である信管が残っていた。隊員たちは、さび付いた砲弾の先端部にある信管を現場で除去した後、搬出した。
地上戦が繰り広げられた沖縄では、今でも毎日のように不発弾が発見されている。これまで不発弾による爆発事故で、多数の死傷者を出してきた。
沖縄県によると、沖縄戦では20万トンの弾薬が使われ、1万トンが不発弾として残されたと推定されている。処理が続けられてきたが、いまだに1800トン以上の不発弾が埋没しているとみられている。
同隊の岩瀬亘隊長は「形をとどめている不発弾は、能力を維持したまま眠っている状態というのがほとんど」とし、80年の時を経ても減らない危険性を指摘する。「その危険を除去できるのは我々しかいない。県民の安心安全な生活を守っていくという思いで常に臨んでいる」と語る。
厚生労働省によると、日中戦争から太平洋戦争における沖縄、硫黄島を含む海外戦没者は約240万人。これまでに約128万人分の遺骨が収容された一方、多くの未収容遺骨がある。
収容された戦没者の遺骨の身元を特定し遺族に返そうと、国は2003年度からDNA鑑定に取り組んでいる。25年6月末時点で1286人分について身元を特定し、順次遺族に返還している。
DNA鑑定は厚労省が、22年に設置した自前の分析施設で実施する。また、連携協定を結んでいる信州大医学部(長野県松本市)のほか、全国8大学の鑑定機関に委託している。鑑定は遺族が自ら申請する必要がある。
信州大医学部法医学教室の浅村英樹教授(54)は「DNA鑑定は血縁が近くないと確率が上がってこない。100年を超えると世代的に極めて難しくなる」と話す。遺族は高齢化しており、残された時間は限られている。
山口県宇部市の周防灘の海面から突き出したコンクリート製の円筒は、海底にあった炭鉱「長生(ちょうせい)炭鉱」と外をつなぐ「ピーヤ」と呼ばれる排水・排気筒だ。ここでは、太平洋戦争開戦後すぐの1942年2月、水没事故があり、朝鮮半島出身者136人を含む183人の労働者が死亡した。遺骨は水没したままになっている。
戦争に突き進む中で、国策として石炭増産が叫ばれた。多くの朝鮮半島出身者らが動員され、各地の炭鉱で労働力として使われた。
国が遺骨収容に動かないことから、地元の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」が収容を目指し、24年からダイバーの伊左治佳孝さん(37)らの協力を得ながら独自に潜水調査を進めている。
長生炭鉱の事故と同じ年、九州の炭鉱で亡くなった朝鮮人の白術泰(ペク・スルテ)さんの遺骨が国平寺(東京都東村山市)に安置されている。遺骨は引き取り手がなく訪ねてくる遺族はいない。故国に帰ることができないままの朝鮮人の遺骨は全国にたくさんある。
尹碧巌(ユン・ピョガム)住職(69)は白さんの法要を欠かさない。
「今も世界で戦争が起きており、白さんのような人たちが生まれている。現在の問題として白さんを供養することが、世界の平和を願う私の役目だと思っている」
写真・文 後藤由耶
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