万博、アクセスの脆弱さあらわに 地下鉄動かず3万人が一時足止め

2025/08/14 19:25 

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 大阪・関西万博会場の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)に乗り入れる大阪メトロ中央線で13日夜、電車が運転を見合わせるトラブルがあり、日本国際博覧会協会(万博協会)によると、万博会場一帯に約3万人が一時足止めされた。車両に電気を供給するレールで停電が発生したのが原因という。万博会場内で一夜を過ごした来場者もおり、万博協会の高科淳・副事務総長は14日に記者会見を開き、「多くの方々が大変な思いをされ、心苦しく思っている」と陳謝した。

 中央線は万博会場への唯一の鉄道ルート。4月22日夜にも車両故障が発生して運転を見合わせ、来場者ら約4000人が一時足止めされており、人工島へのアクセスの脆弱(ぜいじゃく)さが改めて浮き彫りになった。

 大阪メトロによると、中央線は8月13日午後9時半ごろから、夢洲―長田(東大阪市)間の全線で運転を見合わせた。約40分後に夢洲駅と、夢洲駅の隣のコスモスクエア駅(大阪市住之江区)との間で折り返し運転を始めたが、運行の中断、再開を繰り返した。14日午前5時25分になって全線で運転を再開し、約4万人に影響が出た。

 この影響で13日夜は夢洲駅につながる東ゲート付近が混雑し、電車に乗ることができず、座り込む来場客の姿が見られた。コスモスクエア駅も人があふれ、タクシー乗り場にも長蛇の列ができた。

 大阪市消防局によると、14日未明までに万博会場や周辺から119番が40件あり、小さい子どもから80代までの男女36人を救急搬送した。熱中症が疑われるケースも含まれていたが、いずれも軽症としている。

 万博協会は夢洲駅に人が殺到して事故が起きるのを避けるためとして、万博会場に戻るよう来場者に呼びかけた。地震や台風をはじめとする災害に準じた対応に切り替え、4月の開幕以降、初めて万博会場を帰宅困難者向けに夜通し開放した。国内、海外の一部のパビリオンも休憩場所として使われた。一部のパビリオンでは水やパンが配布されたという。

 14日は会場の準備を整えるため、開場時間を通常より1時間遅い午前10時に変更。東ゲート前で朝から来場者の列ができたため、午前9時半に開場した。一部のパビリオンは「帰宅が遅くなったスタッフに休息が必要」などとしてオープン時間を遅らせる対応を取った。

 万博会場へのアクセスはルートが限られ、シャトルバスや水上交通といった手段もあるが、地下鉄が7割超を占める。万博協会幹部は「一番太い輸送経路が断たれた影響は大きかった。コスモスクエア駅まで輸送できたのは助かったが、その先の交通手段がないと考えて会場にとどまった人も多かった」と話した。

 高科副事務総長は会見で「結果として重大な事故は起きていなかったが、反省すべき点はいくつもある。適時、的確な情報をタイムリーに知らせることができていたか、しっかり検証していかなければいけない」と述べた。

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 関西大の安部誠治名誉教授(交通政策論)は、夢洲―コスモスクエア間で折り返し運転をした大阪メトロについて「他の路線と接続できる駅までピストン輸送を行ったことは改善された点だ」と評価。人の滞留を防ぐために、万博会場を開放した万博協会の対応も肯定的に受け止めた。

 その上で「帰宅するか、それとも会場内にとどまるか、来場者が判断できるよう(万博協会は)情報をきめ細かく提供する必要がある。今回のトラブルを検証し、残り期間で同様のトラブルが起きた際の被害軽減に生かすべきだ」と指摘した。【面川美栄、長沼辰哉、小坂春乃、高良駿輔】

毎日新聞

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