<football life>早世のストライカー工藤壮人さんへ、柏と広島の誓い ルヴァン杯…

2025/11/01 12:00 

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 サッカー・JリーグのYBCルヴァン・カップ決勝で1日に対戦する柏レイソルとサンフレッチェ広島には共通点がある。2022年に32歳で亡くなった元日本代表のFW工藤壮人(まさと)さんが在籍していたことだ。タイトルの懸かる両者が、互いに誓い合うことがある。

 10月31日に試合会場の東京・国立競技場で行われた決勝の前日記者会見で、柏のDF古賀太陽選手(27)はこう語った。

 「幼い頃から工藤選手が(背番号)9番を付けて戦っている姿を見てきた。彼の思いを引き継ぎ、このチームでタイトルを取るべきだと思っている」

 柏は13年のヤマザキナビスコ・カップ(現YBCルヴァン・カップ)決勝で浦和レッズを1―0で破り、2度目の優勝を果たした。この試合で決勝点を挙げ、最優秀選手賞(MVP)に輝いたのが工藤さんだった。

 柏の育成組織からトップチームに昇格し、09~15年に在籍。13年にはJ1リーグ戦で19得点を挙げるなど、エースストライカーとして活躍した。

 今、柏のエース番号として受け継がれる「9番」を背負うのがFW細谷真大(まお)選手(24)だ。柏の育成組織出身で、日本代表に選ばれた点も工藤さんと共通する。

 細谷選手は31日の練習後に「しっかり9番が勝たせられるような仕事をしたい」と語り、継承者としてのプライドをのぞかせた。

 工藤さんは海外でのプレーを経て、17~18年には広島でプレーした。当時チームメートとして共に戦った広島のDF佐々木翔選手(36)は「彼の選手としての素晴らしさ、人間性の素晴らしさを今もしっかりと記憶している」と語る。

 1日の決勝のキックオフ前、選手入場時には工藤さんの子供が審判団をエスコートする。

 佐々木選手は「彼が長く在籍した柏と決勝の舞台で戦い、彼のご家族がその場に来てくださるのは非常に素晴らしい瞬間で、すてきな巡り合わせ」と話す。

 工藤さんと、その家族に届けたいものとは。

 柏の一員として細谷選手は「また同じ景色を見せたい」と、13年の優勝の再現を誓う。

 佐々木選手は「僕らはサッカーでしか表現できない。僕らが全力でサッカーをしているところ、楽しんでいるところを彼に、そしてご家族にしっかりとお見せできれば」と話す。

 工藤さんへの思いを込め、両チームの選手が決勝のピッチを駆ける。【高野裕士】

 ◇くどう・まさと

 東京都出身。柏の育成組織からトップチームに昇格し、09年にJ1リーグ戦にデビュー。11年には柏のJ1初優勝に貢献するなど、計7シーズン所属した。米プロリーグMLSでのプレーを経て、17~18年は広島でプレーした。J3テゲバジャーロ宮崎に加入した22年、脳に髄液がたまる水頭症と診断され、10月21日に32歳で死去した。J1通算192試合出場60得点。日本代表通算4試合出場2得点。

毎日新聞

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