「世界知り、自主性育んで」 現地で指導 錦織圭選手と国枝慎吾さん

2026/02/11 06:00 

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 2025年8~9月に開催されたユニクロ全日本ジュニアテニス選手権(日本テニス協会、毎日新聞社主催)のシングルス優勝者らによる海外合宿が12月13~21日、米フロリダ州で行われた。大会アンバサダーを務めた錦織圭選手(36)と国枝慎吾さん(41)も現地で直接指導。参加者たちは自らの技に磨きをかけたのはもちろん、日本とは異なる環境に身を置き、さらなる飛躍のきっかけをつかんだ。【長野宏美】

 ――派遣プログラムが4年目を迎えた。どんなことを期待するか。

 国枝 コミュニケーションや(日本とは違う)文化に触れることで見識も広がると思うので、世界は広いということを感じてもらいたい。

 錦織 テニスは若い頃から海外に出て、いろんなことを吸収するのが強くなる近道だと思います。いろんな選手と戦えること、英語を話さなければいけないこと、海外でもまれてメンタルを強くしなければいけないこと。ここフロリダでテニスをできるのは大きな経験になる。僕は13歳から来ていますが、テニスに没頭できる環境です。

 国枝 鍛えられるのはテニスだけではない?

 錦織 メンタルが一番強くなったと思います。この環境で生きていかないといけないという、砂漠に一人で放り出されたような感じでした。

 ◇ブレない強さ

 ――世界で活躍する選手に共通する人間性があるとしたら、どのような点か。

 錦織 僕は慎吾さんを見ていると、ストイックさとゴールまでの持っていき方は本当に強いと思います。

 国枝 (錦織選手は)自分のペースがあって、ブレないと感じます。元々、そうだったのかな? アメリカで暮らして、そういうマインドになったのか。

 錦織 多分、元からです。自分のテニスのゴールが「これ」となったら、それに向けてあまり周りは気にしていないです。

 国枝 強い選手は主体的に考えられるところが育っている。自分のテニスの課題は何か、それをどう克服するのかを自分で考えてクリエートしてきた。そういう性格からきていると想像していました。

 錦織 主体性は今の子どもたちの課題だと思います。自分で考えて、自分で行動して、その結果に責任を取る。

 国枝 自由なテニスじゃない?

 錦織 はい。

 国枝 誰かから教わってというより、自分はこうしたいと思ってやっていたのですか。

 錦織 自分のしたいプレーがあって、コーチに何を言われても「オレはこれだ」というのがありました。

 国枝 先ほどのマイペースにもつながりますが、自分の軸がしっかりしていたということだと思います。

 ――他にも一流の選手の要素はあるか。

 国枝 負けず嫌いは欠かせない要素。人それぞれ差が出るところで、妻にその話をしたら「私は負けてもいい」と言っていました。個人差があると感じます。

 錦織 引退して、負けず嫌いが薄まりました?

 国枝 でもやっぱり、練習試合とかすると、そこはポイントを取りにいっちゃう。

 錦織 僕は年々、ちょっと薄まっていて、それが怖いんですよ。

 国枝 試合でも?

 錦織 すべてがそう。あとは、努力するというだけで、1位にはなれないかもしれないけど、上まで行ける可能性はある。毎日、ひたすら頑張ろうという能力を持っている人も上位まで行ったりします。

 ◇早めに海外経験を

 ――ここからイエスかノーかの質問。海外に出るのは早いほどいいか。

 錦織、国枝 イエス。

 錦織 特に男子は海外で強い選手と練習したり、世界を味わったりしてほしいです。僕は11歳ぐらいからちょこちょこ海外に出ていくことができたので。

 国枝 ここでプロと練習するのは何歳ぐらいから経験がありましたか?

 錦織 (渡米)2年目ぐらいから。怒られたりもしました。「お前、球が飛んできてない」って。その経験は日本ではできないと思います。「こんなに思い切り打っているのに、飛んでないんだ」というのが印象に残っています。

 国枝 僕は初めてパスポートを取ったのが高校生。その時に世界の一流選手を見て、「車いすテニスの上位の選手は日本の選手とは打ち方が違う」と知ったんです。

 ――ジュニア時代は厳しい環境に身を置くべきか?

 国枝 活躍するとしたら、という前提ですよね。

 錦織、国枝 イエス。

 国枝 何をしたいかによって意味は変わる。人生にはいろいろな道があって、テニスだけが正解じゃないかもしれない。一概には言えないところもあります。

 錦織 まったく同じ意見です。世界のトップ10を本気で目指すなら、若い頃から練習量は必要です。楽しさがないと続かないので、楽しみつつ、しっかり練習量を積めたら理想ですね。

 ――ジュニア時代の自分に伝えたいことがあるか。

 錦織 これはありますね。イエス。

 国枝 うーん、イエス。

 錦織 慎吾さん、伝えたいことないでしょう。

 国枝 こっち(ノー)でもある。未来の自分が話しかけるより、どうなるかわからない先の方が楽しいと思う。ただ、このスポーツで生計を立てている選手が周りにいなかったので、未来が見えなかった。自分が結果を出してプロを選んだという流れでした。もし誰かが先にいたら、それを目指していけたんじゃないかと思う。でも、知らなかったからこそ、やりがいもあったと感じています。

 錦織 僕は二つあって、一つは、相手を尊敬しすぎていたところです。試合で勝ちにいけないことが結構ありました。20歳くらいまで続きました。もう一つは、けがが多かったので、若い頃からもっとトレーニングをやっておきたかったです。

 国枝 身長とか、日本人的なスタンダードで世界の選手と戦うとパワーを感じると思います。どう乗り越えましたか。

 錦織 どう攻略するか、いろいろ試していました。力で押し返すだけでは結果が出ないのは今でもそうで、自分の武器であるタイミングの早さを強みにして、そこを伸ばすのがいいのかなと。常識にとらわれないようにしていました。

 国枝 みんなそこで希望を失ったりするんですよね。でも乗り越えてきたところにすごさを感じているはず。こういうメッセージにはみんな勇気づけられると思います。

毎日新聞

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