大けがでも新技に挑んだ平野歩夢 支えた「技」への渇望 ミラノ五輪
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは第8日の13日、スノーボード男子ハーフパイプ決勝で、平野歩夢(TOKIOインカラミ)は、86・50点の7位だった。
大けがから1カ月もたっていない状況でも、平野歩夢は横回転数を増やした新技のダブルコーク1620(縦2回転、横4回転半)を試みた。高難度化が進む競技のトレンドを考えれば手負いでの挑戦は無謀にも思えた。
高さ約7メートルのU字形の壁を利用して空中に飛び出して、体や板をさまざまな方向に回転させるスノーボード・ハーフパイプ。五輪で3度(2006年トリノ、10年バンクーバー、18年平昌)の金メダルを手にしたショーン・ホワイト(米国)から王座を継承し、この種目の盟主となったのが、平野だ。
横回転が主流だった技に縦回転を加えて、体の軸を斜めにして回るダブルコーク1080(縦2回転、横3回転)、そこからさらに横回転が増えたダブルコーク1440(縦2回転、横4回転)――。五輪での戦いを重ねるたびに、より難度の高い技が上位争いには不可欠になった。
14年ソチ、18年平昌両五輪での2大会連続銀メダルを経て平野が初めて五輪金メダルを手にした22年北京五輪から、さらに異次元の戦いに突入した。
平野が実戦で初めて成功させたのは、トリプルコーク1440(縦3回転、横4回転)だ。北京五輪の決勝でも完璧にメークし、ライバルを驚かせた。
そして、今大会。トリプルコーク1440はトップ選手のルーティンに当たり前のように組み込まれるようになった。今回の決勝で平野が試みたダブルコーク1620は、さらに回転数を増やした超高難度の技の一つだ。
ある選手は「常に大けがと隣り合わせ。練習から危険を感じているし、恐怖心と戦いながら雪上に立っている」と明かす。
今大会でもスノーボード女子ハーフパイプ予選で中国選手が激しく転倒して体を打ちつけ、その場から動けなくなった姿が大きな衝撃を呼んだ。メダルのために、高難度の技を優先せざるを得ない現状に、葛藤を抱える選手も少なくない。
それでも、トップ選手たちは限界に挑む。
平野は「これまでの4年、ハードなトレーニングを積んで、精神もかなり削って歩んできた」と明かす。すべては、五輪のためだ。
今回の男子ハーフパイプで金メダルを獲得したのは、同じ日本勢の戸塚優斗。新王者は、メダル獲得後の記者会見で「日本チームは全員、常に新しい技に挑戦しようとしている。成功しなければ、日本代表に残れないと分かっているから」と語った。切磋琢磨(せっさたくま)の中心にいたのが、平野だった。
過去最高レベルの難度を競い合った今大会。「体」が整わなくとも、「技」への渇望と、強い「心」が平野を支えた。戦い抜いたことの価値は、とてつもなく大きい。【角田直哉】
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