高校野球らしさ? センバツ出場校の「打つだけじゃない」DH戦略
2026年の公式戦から指名打者(DH)制が導入されたことで、高校野球はどのように変化するのか。
打力に特化した選手を起用することが増える。そんなイメージが膨らむが、それにとどまらないかもしれない。19日開幕の第98回選抜大会の出場校は、DHのさまざまな起用法に頭を巡らせている。
◇「大谷翔平以来かな」
高校野球では、1人の選手が投打の中心を担うことは珍しくない。
今大会の代表格が、スケールの大きな投打「二刀流」で既に昨春、昨夏の甲子園を沸かせた山梨学院の菰田陽生(はるき)選手だ。吉田洸二監督は、大きく2パターンの起用法を想定している。
一つは、右腕の菰田選手が先発登板する試合でDHを使わず、降板したら一塁の守備に就かせる構想だ。
二刀流で活躍する大谷翔平選手(米ドジャース)の存在がきっかけで生まれた通称「大谷ルール」が適用されるため、先発投手はDHを兼ねられる。
だが、マウンドを降りると再登板できない。このリスクを避けるために、DHを使わないことを考えている。
もう一つは、左腕の檜垣瑠輝斗(るきと)投手らが先発する試合では菰田選手が一塁を守り、他の選手をDHで起用するものだ。
一塁守備のうまさもチーム随一という菰田選手は「グラウンドに立ち続けてチームを引っ張りたい」と話す。
有力選手がいることが悩みになっているチームもある。大谷選手の母校・花巻東(岩手)だ。
佐々木洋監督はDH制には賛成の立場だが、「なんで、よりによって(DH制の導入が)今年なのかな」と話す。
ともに左腕投手で打線の中軸も担う万谷堅心(まんや・けんしん)選手、赤間史弥選手がおり、DHの使い方を難しくしている。
これほど投手に打力があるのは「大谷翔平以来かな」と佐々木監督。出場機会の増加や投手の成長につながるため、DH制を前向きに捉え、シミュレーションを重ねている。
昨夏に続く甲子園となる高川学園(山口)の木下瑛二選手もエース右腕で中軸を担う。松本祐一郎監督は、先発した木下選手が降板後に再び投げる場合を考え「このチームにDHはしばらく必要ない」と明言する。
◇「ツープラトン方式」も
DHを、戦術の幅を広げるために役立てようというチームもある。
昨秋の関東大会で準優勝した花咲徳栄(埼玉)は、DHと代走をセットで考える。DHの選手が出塁すれば、俊足の選手を代走に送る。打順が一回りしたら代打を出し、同じことを繰り返す。
DHに打順が巡るたび、打者と走者が2人がかりでプレッシャーをかける、合体技のような「ツープラトン方式」だ。
そうした戦い方を想定した練習を通じ、主将の本田新志(あらし)選手は「打つ専門、走る専門と、個々の役割を理解して責任感が芽生えた」と振り返る。
岩井隆監督は「2桁の背番号は走力など何かに特化した選手になる」。今春のセンバツのメンバー選考は「一芸に秀でている」ことを重視し、昨秋の関東大会から5人が入れ替わった。
帝京長岡(新潟)の芝草宇宙(ひろし)監督は、持ち味の走塁を生かすため、DHに「足が速い選手を入れようかとも考えている」。昨秋の公式戦では、今大会の出場32校中最多の37盗塁をマークした。DHによって「攻撃の幅は間違いなく広がる」とみる。
四国王者の英明(香川)の香川純平監督は「一口にDHと言っても、求められる役割はいろいろ。打つだけじゃない」と語る。状況次第で、DHの打順に、出塁やバントにたけた選手を代打で送るイメージを描く。
継投にも影響がありそうだ。これまでは投手に代打を送る際、継投のタイミングも合わせて考える必要があった。DHを使えば、両者は切り離して考えられる。
複数の好投手を擁する大阪桐蔭の西谷浩一監督は「采配する方としてはやりやすい。(投手を)スパッと代えられる」と話す。
チーム事情や思い描く戦略によって、DHの構想はさまざま。高校野球ならではのDHの使い方が広がっていきそうだ。【深野麟之介】
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