生活保護申請巡り足利市議2人が「不当要求」か 政倫審始まる 栃木

2026/03/16 16:31 

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 栃木県足利市で車中泊を続け、体調を崩した男性の生活保護申請を巡り、同市の共産党市議2人が昨年9月、閉庁の土曜日に電話し、窓口終了後の所管課で対応を求めるなどした。市はこれらの行為が議員による「不当要求」にあたると市議会に申し入れ、議会は政治倫理審査会で審査を始めた。

 議員2人は尾関栄子市議(72)=7期=と鳥井康子市議(59)=2期。昨年12月、市長と議長らによる政策懇談会で市側が「厳正な対処」を求めたという。これを受け議員4人が2月20日に審査請求し、同27日の議会運営委員会で審査会への付議が決まり、議長に答申した。

 同市社会福祉課の報告書によると、不当要求とされるのは次の通り。9月20日(土)、守衛室に電話し、同課職員の折り返しに対し、同日の申請手続きを訴えた▽22日午後5時半、勤務時間外に同課に入室した▽この際、所持金がない男性へのつなぎの現金支給を求め、不可能と伝えると「福祉事務所の存在意義を問われる」と繰り返した▽24日、男性が受診した医療機関の請求書を一方的に置いていった――など。さらに25、26日には男性に対する面接時に議員が同席したことについて「無言の圧力をかけてきた」としている。

 一方、両議員によると、男性は今年6月ごろ、名古屋市から足利市に来た。同市で就労したが8月に新型コロナウイルスに感染。9月上旬から車中泊を続けていたという。

 同19日夜、「頭痛がして医者に行きたいが、金がない」と両市議側に相談があった。男性には糖尿病の持病があり、2回の脳梗塞(こうそく)の既往歴もあった。コロナ感染後でもあり「命に関わる」と判断し、20日に無料低額診療を受診させた。

 閉庁日の電話については「状況は急迫していた。医療を含め生活保護が直ちに必要な状況を伝えた。その日の手続きを求めたのではなく、実際の申請は週明けの22日にした」という。

 議会事務局によると、22日は午前10時から午後4時59分まで決算審査があり、議員2人も出席していた。男性は同日、生活保護を申請したが、宿泊場所や当座の生活費などへの対応はなく、鳥井議員に電話があった。

 決算審査終了後に男性に確認し、到着を待って同課を訪れると時間外になり、課長に事情を説明するため入室したという。

 「市は男性に居場所も所持金もない状況を把握したはず。時間外になったのは確かだが、時間内にしっかり対応していれば、訪れる必要もなかった」と話している。

 審査請求では2人の行為を「議員の地位を利用し不当に特定の者に対して有利な取り扱いを強要した」と指摘した。これに対し2人は「適切な対応を求めた。議員が同行するかどうかで取り扱いが変わるような行政はあってはならない」と反論している。

 同課は10月2日、男性に対し、最初の電話があった9月20日にさかのぼって生活保護支給を決定した。【太田穣】

毎日新聞

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