トランプ関税に対応急ぐ日本企業、輸出先変更も 政府「影響精査」
トランプ米政権が20日(米国時間)に発足した。経済・通商分野で最大の焦点である関税政策を巡り、トランプ大統領はメキシコとカナダに対する25%の関税の即時発動は見送ったが、2月1日の実施を示唆。「米国第一主義」のトランプ流に日本が翻弄(ほんろう)される状態になりそうで、対応を検討する企業の動きも出始めている。
「日本企業への影響を十分に精査していかなければならない。米政権と緊密に意思疎通を図っていく」。武藤容治経済産業相は21日の閣議後記者会見で、トランプ氏が明かした今後の関税措置に警戒感を示した。経産省幹部は「日本が(直接)ターゲットにされなくても、全く安心できない」と険しい表情を見せた。
メキシコは人件費が安く、一定要件を満たせば米国への輸出品が無関税となるため、日本を含めて多くの世界的メーカーがメキシコに生産拠点を設置している。そのため米国にとっては最大の貿易赤字国で、トランプ氏の標的となっているが、大幅な関税が発動されれば企業収益は大打撃が避けられない。増田貴司・東レ経営研究所エグゼクティブエコノミストは「サプライチェーン(部品供給網)の組み替えや生産拠点の見直しが急務になる」と指摘する。
◇日本企業は対応模索
既に対応を模索し始めている日本企業もある。空調大手のダイキン工業は、主に米国の大型施設向けなどの空調機器を生産するメキシコの工場を、米国向けから「南米向けの仕様に変えていくこともある」(十河政則会長)としている。競合他社も生産拠点を置いており、状況を見極めつつ判断していく模様だ。
自動車部材や炭素繊維の生産拠点を持つ東レの日覚昭広会長も「自動車産業(全体)も影響を受けざるを得ない。(関税を発動すれば)結局ツケを払うのは米国だが、対応はしっかりしていく必要がある」と話す。
企業活動の見直しの動きはメキシコにとどまらない。トランプ氏は、日本を含む全ての国からの輸入品に10~20%の追加関税を課す考えも大統領選で公約しているためだ。
中部地方には航空機関連メーカーが多いが、米ボーイングに機体の部品を納入する、ある愛知県企業の経営者は「自国の企業の首を絞めることになる関税引き上げはしないはず」としつつ、米国企業の新規発注が今後望めなくなる可能性があるとみて「半導体や医療関係など、他分野の仕事を増やしていく」と話した。
日本貿易振興機構が今月17日に発表した、在米日系企業を対象に実施したアンケート(有効回答260社)の結果によると、トランプ氏の関税政策の影響を受けると答えた企業の割合は全体の47・3%を占めた。ただ、伊藤実佐子・調査部米州課長は「既に供給網の再編を済ませた企業もある。対応方法が分からない企業は減った印象だ」と指摘する。
第1次政権時のトランプ氏の政策は前言撤回となることも珍しくなかった。当時の混乱も教訓にしつつ、日本政府や企業は難しい対応を迫られることになる。【町野幸、古川宗、井口彩、道永竜命、宮崎泰宏、大原翔、加藤結花】
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